宇宙開発:安全保障優先、インフラ重視転換…基本計画素案
毎日新聞 2014年10月31日 11時46分(最終更新 10月31日 12時36分)
内閣府宇宙戦略室は31日、今後10年間の宇宙政策の基本方針を定めた新たな宇宙基本計画の素案を、自民党宇宙総合戦略小委員会に示した。宇宙安全保障の確保を最重点課題と明確に位置づけた上で、人工衛星など宇宙関連の事業規模として官民合わせて10年で5兆円を目指す。気象衛星や通信衛星など社会インフラとしての宇宙利用拡大を目指した現行計画に比べ、安全保障重視の姿勢が強まった。実現のための工程表と併せ、年内に正式決定する。【大場あい】
現行計画は昨年1月に策定され、2013年度から5年間の政策を盛り込んだ。だが、安倍晋三首相が今年9月、国家安全保障戦略(昨年12月策定)などを踏まえて、安全保障への重点化、宇宙産業強化などを図る新計画策定を指示。首相の諮問機関の宇宙政策委員会(委員長=葛西敬之・JR東海名誉会長)が見直し作業を進めた。
素案によると、宇宙政策の目標として、宇宙安全保障の確保▽民間の宇宙利用▽産業や科学技術強化の3点を掲げた。中国の人工衛星破壊実験や北朝鮮のミサイル発射などを踏まえ、このうち安全保障を最重点課題と明記した。具体的な取り組みとして、高精度の測位情報を地上へ送る準天頂衛星を現在の4基体制から7基体制にすることや、人工衛星への衝突などが懸念される宇宙ごみ監視施設の整備と運用、情報収集衛星の基数増などを挙げた。国内のロケット発射場の見直しも進める。
産業強化策では、民間の宇宙事業への参入を促す仕組みとして、企業などが衛星やロケットを独自に打ち上げる際の安全性や事故時の賠償責任能力などを審査する制度を設けるための「宇宙活動法」を整備する。宇宙機器や関連ビジネスを官民一体となって国際市場に売り込むための作業チームも創設する。
宇宙科学・探査に関しては、11月30日に打ち上げ予定の小惑星探査機「はやぶさ2」のような世界最先端の成果を目指す計画を10年で3回実施。新型ロケット「イプシロン」による科学衛星は5回打ち上げる。一方、国際宇宙ステーション計画への20年以降の参加や、有人探査の是非については、費用対効果などを考慮して総合的に検討するとの表現にとどまった。