2014年11月23日20時08分
衆院選の位置付けや争点を映す「解散のネーミング」。過去の衆院選では、印象的な呼び名が選挙の争点やイメージを左右してきただけに、与野党はそれぞれの名付けで主導権を握ろうとしている。
「この解散はアベノミクス解散であります」。衆院解散直後、安倍晋三首相は21日の記者会見で解散の呼び名をまず切り出し、政権が進めてきた経済政策こそ衆院選の争点と強調した。
会見の直前まで、首相は解散の呼び名について考えをめぐらせていたようだ。
首相周辺は「本当は『この道しかない解散』が一番気に入っていたが、野党が『アベノミクスの失敗隠し』と言うから『アベノミクス解散』を選んだ」。実際、首相に近い甘利明経済再生相は21日に「この道しかない解散」を口にしていた。
首相の念頭にあるのは、小泉純一郎首相が仕掛けた「郵政解散」だ。2005年、参院で郵政民営化法案が否決されると、すぐさま解散を断行。小泉氏自ら「郵政解散」と名付け、自民党の大勝を引き寄せた。
だが、過去を振り返ると、政権側の思惑や実現したい政策がそのまま呼び名となる「政権主導型」は多くない。むしろ、中曽根康弘首相の「死んだふり解散」、麻生太郎首相の「追い込まれ解散」など、解散時の状況を表す「状況説明型」や、その時の争点を冠した「安保解散」(池田勇人首相)、「政治改革解散」(宮沢喜一首相)などが目立つ。
「バカヤロー解散」(吉田茂首相)、「神の国解散」(森喜朗首相)、「近いうち解散」(野田佳彦首相)など、解散前後の首相発言から取ったケースも多い。
野党からは解散自体を疑問視する呼び名が相次ぐ。
民主党の枝野幸男幹事長は22日、「首相のやりたい政策は300超の議席であと2年間は進められる。『アベノミクス解散』は意味不明だ」と指摘し、「独りよがり解散」と断じた。維新の党の江田憲司代表も「野党の足並みがそろわないうちの党利党略解散」などと批判する。
朝日新聞が19、20日に実施した全国緊急世論調査では、消費増税の延期について「国民に信を問う」という首相の解散理由に、65%が「納得しない」と回答した。与党内にも、首相が「アベノミクス解散」と名付けて選挙に打って出たことに、国民の理解が広がっていないとみる声もある。首相の思惑通りの展開になるか、自己都合を優先したと見なされるかは、選挙戦の行方にも影響しそうだ。
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