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 自動車に乗る人を守るはずのエアバッグが、凶器になるかもしれない――。米国でも波紋を広げるタカタ製エアバッグのリコール問題。対象車種は車メーカー各社のホームページなどでわかるが、「修理が終わるまでは乗らないで」と呼びかけるメーカーもある。

■1時間で無料改修

 リコール対象となった車の持ち主には、国土交通省が管理する登録情報を元に、各車メーカーがダイレクトメールなどで通知する。販売店に持ち込めば1時間余りで無料で直してもらえる。中古車も同じだ。

 例えば、トヨタ自動車は2010年以降、国内で21車種、計約101万台のリコールを国交省に届け出た。同社のホームページでは、車検証の「車台番号」を打ち込むと、自分の車が該当車かどうかがわかる。電話相談の窓口もある。ホンダ、日産自動車、マツダ、富士重工業、BMWなども同様の対応だ。

 ただ、問題のあるタカタ製エアバッグは世界中に広がっており、日本に届け出た10社だけで、リコール対象の車は約1300万台に上る。今年6月、各社による大量リコールがあった際、十分な数の改良品が用意できず、応急処置として、衝突してもエアバッグが作動しないようにした。

 国交省によると、国内でリコール対象になった約254万台のうち、問題のエアバッグがあるのは助手席用が約236万台、運転席用が約18万台だった。トヨタは「改修まではなるべく助手席に乗らず、乗っても座席を一番後ろまで下げて」と呼びかけている。

■タカタ「現在生産の製品は安全」

 エアバッグは、衝突の衝撃により、折りたたまれたバッグが瞬時にガスで膨らんでクッションとなり、人の頭や胸を守る。運転席用はハンドル内、助手席用はダッシュボード内にバッグが収められている。

 化学反応で燃焼ガスを容器の穴から噴き出させるのは「インフレーター」(膨張装置)。筒状の金属容器にドーナツ形のガス発生剤が入っている。タカタの資料では、衝突からバッグが膨らむまで0・04秒。まばたきの半分以下の時間だ。

 一連のリコールでは、このインフレーターに問題があった。国交省への報告では、タカタが米国工場でガス発生剤を作った際、押し固めが不十分だったのに加え、メキシコ工場では湿度の高い場所に放置され、ガス発生剤が湿気を吸って膨らんだ。表面積が想定より大きくなり、作動時に爆発的に燃焼して、金属容器が破裂。金属片が飛び散り、乗っている人に刺さる危険があるとわかった。

 死亡事故は少なくとも米国で2件、マレーシアで1件起きている。国内での人身事故はないが、物損事故が4件。静岡県では1月、電柱にぶつかったトヨタ・カローラの助手席エアバッグが破裂し、高温の金属片が後部座席に飛び散って車内が焼けた。タカタは20日の米議会上院公聴会で、指摘された死亡事故5件中3件で関連を認めて謝罪。「現在生産されている製品は安全だ」と訴えた。(工藤隆治)

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 〈タカタ〉 シートベルトやチャイルドシートなど自動車の安全部品の大手メーカー。エアバッグの世界シェアの2割を占め、スウェーデンのオートリブ社に次ぎ2位。日本の大手自動車メーカー全社にエアバッグの採用実績がある。繊維織物会社として1933年に創業。本社は東京都港区。