2014年11月21日 15:18 | |
初音ミクは音楽の将来かも、有力誌ニューヨークマガジンが誌面特集(2) | |
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先月17、18日に、ニューヨークで初のコンサートを開催したバーチャルアイドル初音ミクだが、その存在は、音楽の将来にも影響を与えるかもしれない。
ザ・ニューヨーカーと並ぶニューヨークの有力情報誌「ニューヨークマガジン」は、11月17日号で、「初音ミクはソフトウェアの一部。彼女はまた、音楽の未来かもしれない」との特集記事を組み、初音ミクについて考察している。 40年以上の歴史を持つニューヨーク・マガジンは、有料購読者40万人以上の大手週刊情報誌だ。 3回に分けて、その内容を紹介する。 【第一回はこちら: 初音ミクは音楽の将来かも、有力誌ニューヨークマガジンが誌面特集(1)】 【NYタイムズなどの特集: 初音ミクが世界の音楽を変える?NYタイムズやNYポストが相次ぎ特集】 【TV出演の動画: 初音ミクがNY収録の人気トーク番組「レイト・ショー」に出演】 そして今、ミクの英語版がリリースされてから一年余りが過ぎ、彼女のことを知っているアメリカ人の数が増えている。10月中旬の金曜日の夜、ハマースタイン・ボールルーム前に並んだ数千人の列は、非常に多様であった。普段着の両親に連れられたコスチュームを着た子供たち、笑い声を上げるたくさんの10代の若者たち、最寄のコミックストアへの行き方を即座に教えてくれそうな大人たちなど。少なくとも半分の人たちはミク関連のものを身に着けており、およそ三分の一はコスプレだったと言う。 記者は会場の中に入りながら、ニューヨークタイムズと同じ疑問が浮かんできたと言う。それは大きな疑問だ。もし、ミクの人気が上昇し続ければ、バーチャルポップスターは最終的には人間の代わりになりえるのであろうか?サイボーグのジャスティン・ビーバーは、実際のジャスティン・ビーバーよりもより安全な投資利益をもたらすのであろうか?これは会話のスタートとしては正確でないと考えた記者は、少し退屈そうに見えた父親とその10代の息子に近づき、「どこから来ましたか?」という質問から始めた。 「シンシナティ」(※注:内陸部のオハイオ州の都市。ニューヨークとは1000キロメートル以上の距離がある)が答えだった。ただ公演を見るためだけに来ていたのだった。息子は3年間ミクに夢中になっており、記者が今春マディソンスクエアガーデンで開催されたレディガガのArtRaveツアーで、ミクのライブを見たと話すまでは、記者のことを疑いの目で見ていたと言う。オハイオ州で公演を見たと言う少年と記者は、ミクのパフォーマンスが少し精彩を欠いていたことに同意した。ホログラムの効果は正しく見せることが出来るときに最高になるため、ミクの設定はアリーナ用には作られていなかった。ステージの右端のほうにあった記者の席からは、角度は全て間違って見えたと言う。「ええ、はい」と話す少年は、「でも、あれはまた録音演奏だった。今晩は、もっと良く行くはずだよ、本当のミュージシャンが後ろにいるから」と語る。それに同意する記者。 「初音ミクのファンたちに出会ったとき、まるで、自分たちがこれを作ったかのように、みんなとても喜んでいるのです」と、ミクのドキュメンタリーに取り組んでいるカリフォルニア大学サンディエゴ校のタラ・ナイト教授は語っている。「この出来事の一部なのです。」 【NYタイムズなどの特集: 初音ミクが世界の音楽を変える?NYタイムズやNYポストが相次ぎ特集】 【NY公演も話題に: 初音ミクのNYコンサート、CBSニュースが動画で報じる】 【TV出演の動画: 初音ミクがNY収録の人気トーク番組「レイト・ショー」に出演】 アメリカでは、ミクの「ホログラム」要素はすべての話題を集めているが、ボーカロイド文化について深く掘り下げてみると、これは恐らく、ミクにとって最も関心が低い部分であることが分かるだろう。より革命的なことは、彼女の音楽は全て、コンサートで演奏される曲も含め、ファンによって書かれており、その中には楽譜を読めなかったり、ミクが登場する前には決して曲を書くことは無かったような人がいるという事実だ。「ミクは、レディーガガや他の誰かのように、本当に特別な人として見られることは余り無く」と、ナイト教授は語り、「しかしむしろ、自分自身を表現することが出来る導管ということが出来ます」と話す。 クリプトン社は、クリエイティブ・コモンズのライセンスでミクを提供しているため、ファンは、そのイメージを非商用の利用には無料で利用することが出来る。そして、ファンは自分自身が作るの曲に対する権利を保有しているため、まれなケースではあるが、そのヒット曲からお金を稼ぐことも出来る。 ナイト教授は、このような話題を話すときはとても熱狂的であり、そこからは、なぜミクがメディア研究の教授の夢となりうるのかは容易に分かる。その夢は、一般参加型で階層化されていないポップスターの座の全く新しいモデルだ。「これは、現在の芸術文化の生産方法の話とは完全に反対なのです」と熱く語る教授。「それは、独創性のオーラを持ったミク・ジャガーではないのです。何か他のものなのです。初音の最も急進的な部分です。この本物であることのアイデアと、ソロアーティストが自分自身がなれる最高のものとなりうることは、本当に爆発的なものです。」 確かに、このポスト・ヒューマン・ポップスターの話は全て、ある人たちにはとても奇妙に聞こえる。しかし、それは本当なのだろうかと続ける記者。女性がフォトショップによってサイボーグの肌を持ったような雑誌のカバーから、ベネディクト・カンバーバッチがドラゴンに変身できような「実写」映画と呼ばれるCGIまで、私たちはある種の拡張現実に慣れているとして、音楽の世界でも同じでだと続ける。実際、アメリカ人は、そのペルソナと出力にボーカロイドのエコーを使っているアーティストの曲をたくさん聴いている。 ボーカロイドはまた、デジタル文化が、ファンをより見えるものとすることにより、ポップスターの座を変化させてきた方法の論理的延長線でもある。ミクは、ファンがその応援するアーティストの商業的な成功の原因になりうることにさらにワンステップ加え、そのクリエイティブ的な成功にも責任を負うということを現わしている。ミクの次のシングルリリースのために曲を書く必要はないのだ。自分自身のために曲を書くのだ。もしくは、ミュージックビデオの制作や、ミクのダンスの振り付け、シングルを他の言語に翻訳することかもできる。 ここにはしかし、大きな問題もはらんでいる。ミクは、ゴージャスで、信じられないほど細く、永遠に未成年の少女のイメージから出来ており、あなたはその曲を作れ、話しかけ、願うことを何でもさせることができ、一部のファンには、間違いなくこれが彼女の魅力の一部である。ナイト教授は、ミクを「完全に性的な対象」としている男性たちに出会ったことがあり、彼女を「妹、守って助けてあげるもの」としてみている人も多くいると話す。しかし、これらの疑わしい解釈を可能とする同じオープンソースの品質は、より過激なミクも作り出すことが出来る。レズビアンボーカロイドのコミュニティもあり、その多くは、ミクを他の女性のボーカロイドキャラクターとカップルにしている。また、ミクの42キロの設定を否定して、代わりに反対の対象として作られたFatsune Mikuも存在する。 「日本の女性から」と、ナイト教授は話し、「かわいらしさと権利の組み合わせがあると思います。ミクのコスプレを日本でしている女性たちは、しばしば静かでシャイな人たちです。だから、これは権利を与えられたと感じることが出来る、とてもパブリックな方法なのです。」 (3へ続く-更新前) 【第一回はこちら: 初音ミクは音楽の将来かも、有力誌ニューヨークマガジンが誌面特集(1)】 【NYタイムズなどの特集: 初音ミクが世界の音楽を変える?NYタイムズやNYポストが相次ぎ特集】 【TV出演の動画: 初音ミクがNY収録の人気トーク番組「レイト・ショー」に出演】 |
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