ゲーム業界就職活動記・コンパイル編



 最初に断っておきますと、この文章はゲーム業界目指し就職活動していた1998年当時に書いたものではありません。
 当時同じタイトルの文章を書いて以降長年公開していましたが、2008年現在読み返してみてだいぶ酷い内容だったので、今回当時を振り返りながら書き直す事にしました。
 勝手に書き直すなよ! というご意見もあるかもしれませんが、あまりにいたたまれなくなったものですから、すみません。


 1998年当時、僕はコンパイル(*1)というゲーム会社から入社内定をもらいました。
 ところが大学の卒業式である同年3月18日、突如内定取り消しを喰らいまして。
 この日の出来事についてはコラム0038に詳しく書いてます。

 そして2008年4月のつい先日、当サイト掲示板に訪問者の方から
「コンパイルの内定取り消し喰らった人のサイトとして知った」
 という書き込みを頂きました。
 なんでも某巨大掲示板で、パソコン雑誌『ログイン』(*2)休刊についてのスレッド内に当サイトのurlが貼ってあるとか。

 そのスレッドは見つける事が出来なかったんですが、「cnoise」「login」で検索してみて代わりに見つけたのが「コンパイルの現状 〜3連鎖〜」というスレッド。
 ここにも当サイトのURLが貼られていたんですが、貼った人のコメントは

321 名前: 広野はいいやつ 投稿日: 02/04/01 01:37

>>286

こんな大馬鹿もいるよ

 ええ――― Σ( ̄Д ̄;)
 いきなり大馬鹿呼ばわり。
 さすが2ちゃんねる、容赦無いっすね……。

 で、これは「>>286」の書き込みに対するレスとして書かれたもののようですが、「>>286」の書き込みも確認してみると

286 名前: あの時の内定者。 投稿日: 02/03/27 14:33

98年3月に内定取り消しされた者です。
現在、某ゲーム会社で営業やら広報やらやってます。
で、質問。
どなたか、当時120人いた内定者のその後って知ってますか?
業界に都合5年弱いますが、コンパイルの内定者だったって人に、
あったことが無いんですよねぇ。
ひょっとして恥ずかしくてカミングアウト出来ないだけかね。
営業的には話のネタになるので良いのですがね。

 そしてその後、当サイトを「大馬鹿」として紹介してくれた書き込みに対しこの方は

346 名前: あの時の内定者。 投稿日: 02/04/03 09:48

>>321
教えてくれてありがとう〜。
でも、この方とは同僚になりたくないです。
コンパイルへの恨み節が・・・。可愛そうに。

 同じ境遇の人からさえ呆れられてる!?
 そういえばコンパイル絡みで書いた事は何年も読み返してなかったけど、そんなに酷い文章晒してたっけ?

 ―――という事で読み返してみたら、これが本当にひどかった。
 最終面接の思い出なんかをつづっているのは良いとして、最後の行に唐突に
「呪ってやる」
 とか書いてある(笑)。
 うーん若いなー僕、若気の至りまくってるなぁー。
 当時の感情がダイレクトに書かれすぎてて、読者はもちろん読み返した著者自身ヒく文章になっていました。

 まあそんな訳ですので、すみませんこのコラム書き直させて下さい。



 さて、コンパイルへの就職活動の記憶もだいぶ薄らいできてしまいましたが、1998年当時書いた文書からかいつまんでいきたいと思います。

コンパイルの採用活動は妙にサクサク進んだような印象がありました。
課題提出も筆記試験も、あまり難しかったという印象はありません。

そして呼ばれた最終面接。
案内には「私服で来て下さい(リクルートスーツ禁止)」とありました。

 という事で、普段着で東京の面接会場へ。
 試験開始を待つ間、記念品と称して『ディスクステーション』(*3)という書籍を渡されたので読んでいました。
 するとそこに掲載されていた1枚の写真には、当時の株式会社コンパイル社長・仁井谷正充氏のコスプレ姿が。
「うわ、今から面接する会社の社長がコスプレしてるよ」
 と軽いショックを受けたのを覚えています。

 やがて始まった集団形式の面接。
 その内容は、1998年当時の文書から引用すると

社長含む役員の方々からの質問は、やはり他の会社のいわゆる一般的な質問とは趣の異なるものでした。
小さい頃から親に褒められている事と怒られている事を1つずつ挙げて下さい、とか。

 そしてさらにこの面接最大の特徴はカラオケの実技があること。
 そう、面接の最中に各自好きな曲を歌うのです。
 僕は『宇宙戦艦ヤマト』のテーマを歌いました。

 後から知った話ですが、この最終面接でカラオケを歌わせる目的は“プレゼン力”を測る事だそうです。
 つまり歌が上手いか下手かという事よりも選曲のセンスを見ているという事になるのでしょう。
 やがて僕は内定通知をもらう事となりましたが、『宇宙戦艦ヤマト』の選曲は悪くなかったという事でしょうか。
 いやまあ、それが後日取り消される内定だったという事もふまえると、正解だったのかどうか疑問ですが。



 今回このコラムを書き直すにあたりコンパイルについて調べたところ、Wikipediaで面白い事を色々知りました。

 当時コンパイルの経営状況が悪化した要因の1つとして、
「企業体力を省みない人材の大量採用」
 があったこと。
 なるほど、どこのゲーム会社からも採用されなかった僕が唯一ここから内定を獲得できたのはそういう事だったのか。

 また他の要因として
「社長に浪費癖があった。例えば『ぷよぷよ通(もしくは『ぷよぷよSUN』)』での販促展開で、実際に社長がコスプレをしていた『サタンさま』の衣装作成に100万円掛かっていたと自ら明言している」
 とか。

 面接直前に見た写真の、あのコスプレが会社を潰した要因だとォォォ!?

 今思うと不吉な伏線が色々張られた面接だったんですねぇアレは。


 つらい思い出なども
「後になれば笑い話」
 とよく言いますが、僕にとってコンパイルの件はまさにそれ。
 先に引用させていただいた「あの時の内定者」さんと同じく、今の僕もこのエピソードは良い話のタネとして使っています。

 10年前にこのコラムを
「呪ってやる」
 という言葉で締めくくったりもしましたが、今はこの言葉を捧げましょう。

 ご冥福をお祈り致します。


(初稿 1998.3.20)
(リニューアル 2008.04.19)


*1.コンパイル
 株式会社コンパイル。1982年広島市南区に設立。
 1991年に第1作を発表した『ぷよぷよ』シリーズが有名で、当時「ぷよぷよブーム」で一世を風靡し、キャラクターグッズの販売にも手を広げた。
 しかしその後『ぷよぷよ』に続く新たなヒットを生む事が出来ず、グループウェア『パワーアクティ』の開発費用増大などの要因により経営が悪化。
 1998年3月18日に広島地方裁判所への和議を申請。和議は受理され、就職予定だった新卒者の大量内定取り消しや大々的な社員の解雇が実施された。
 2003年1月に会社を解散し、同年11月6日には東京地方裁判所より破産が宣告された。

*2.ログイン[LOGiN]
 パソコンゲーム雑誌。1982年5月にアスキー(現・メディアリーヴス)より季刊誌『ASCII 別冊ログイン』として創刊され、1983年4月号から『月刊ログイン』として月刊化。
 パソコンゲーム創世記より、パソコンゲーム文化成熟の一翼を担ってきた。誌面の徹底した娯楽路線、読み物の充実から非ゲーマー層からの人気も集めたが、パソコンゲーム人気の下落とともに勢いを失い、2008年5月24日発売の同年7月号を以て休刊することが決定した。

*3.ディスクステーション
 株式会社コンパイルの代表的商品の1つ。ディスクマガジンという、月刊誌のような形態をとったパソコンソフトシリーズ。



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