慶應義塾大学 青木大和さん | ハイパー学生のアタマの中
ハイパー学生のアタマの中
慶應義塾大学 青木大和さん
あおき・やまと●1994年生まれ、東京都出身。中学に入るまでは、「勉強ができることがすべて」と考えていたが、中学で出会ったスポーツや俳優業、音楽などの分野で活躍する友人たちを見て「自分を変えよう」と奮起し、高校1年時に休学してアメリカへ留学。現地で受けた授業をきっかけに政治への関心を深め、帰国後は政治家を目指しながら「日本を変えよう!」と若者と政治をつなぐ活動を開始。若者の政治への関心の低さを改善し、同時に若者の声が政治に反映されることを目標に、2012年に任意団体「僕らの一歩が日本を変える。」設立。同年8月には討論会「高校生100人×国会議員@国会議事堂」を主催したほか、iPadを導入した10代向け模擬選挙の実施や、テレビ番組の開票速報のコメンテーターなども経験。
「高校生100人×国会議員@国会議事堂」は、これまでに3回実施。「留学中に、州知事や地元の政治家が学校に来て学生と討論することがあったのですが、それがきっかけで、日本でも政治家と会って話す機会が必要だと考えるようになりました」。
■ アメリカの学生たちの政治意識の高さに触れ、「日本を変えたい」と決意
高校1年でアメリカに留学した時が、ちょうどオバマ大統領の就任直後でした。最初に受けた授業で、大統領演説の動画を見て内容について討論したのですが、その授業の雰囲気に圧倒されてしまって。さっきまでは机の上に足を乗せていた態度の悪い学生でさえも、政治への意識が高く、自分の考えを自由に発言している。「思ったことを言っていい社会なんだ」と痛感しました。そして、アメリカにいた1年間で、僕の中でもそれが当たり前になっていったんです。
僕はもともと、社会科が得意で、新聞や教科書を読むのが好きでした。だから、帰国後はもっと政治を勉強して、自分の強みにしていこうと考えていました。実際、政治経済の授業はみんな寝ていて聞いていなかったし、興味がなさそうでした。「若者と政治」はよく語られますが、高校生にフォーカスして政治や社会問題について考える場をつくることができたら、大きな“初めの一歩”になると思ったのです。
それで最初に考えたのが、僕自身が政治家になるということです。もっと政治について知るために、政治塾に通い、本や新聞を読んで政治を勉強し、政治家にアポを取り直接会いに行ってインタビューをするなどの活動を一人で始めました。得た情報はどこかに発表するわけでもなく、自分が聞いて終わり。政治オタクみたいに知識を深めて、人に偉そうにしゃべるのがかっこいい…。そんな活動をメディアで取り上げてもらったこともあり、「自分は社会を変えようと活動している有名人だ」と、アメリカ帰りの自信過剰野郎みたいになっていた部分がありました。
それに気づかされたのが、一番仲のよかった学校の友人に言われたひと言でした。「お前って何かすごい頑張って何かを目指しているけど、俺らはお前のすごさがわからない」--。正直、ものすごくショックでした。自分なりに一生懸命やっていることが、一番近くにいる友人にさえも伝わっていなかったわけです。大きな挫折であり、ターニングポイントでした。
一方で、政治家の方々にアポを取る過程で、自分なりの課題が見つかりました。それは、「選挙権のない僕のような高校生には興味を持たない国会議員がたくさんいる」という現実でした。実際、800人ほどの議員に連絡を取りましたが、会ってくれたのはたったの3人です。
ならば、仲間を集めてこの課題を解決したい、今は選挙権がないけれど、5年後、10年後に社会を担っていく存在になっていることを気づかせたい、そんな活動をしていこうと思いました。それが、「高校生100人×国会議員」という討論会をやろうと考えたきっかけです。何かを始めるなら一緒にやりたいと考えていた友人5人に声をかけて、「僕らの一歩が日本を変える。」を設立しました。
全国から高校生を100人集める。自民党の小泉進次郎議員のような、政治に関心が低い学生でも知っているような知名度のある国会議員に参加してもらう。お互いがホンネで話せる場をつくる--こうした戦略が功を奏し、2012年8月に主催した討論会「高校生100人×国会議員」は大きな反響があり大成功を収めました。
多くのメディアに取り上げてもらい、「高校生たちが動き出す」といった語られ方があちこちでされました。参加した高校生たちは、全員が政治に興味があったわけではありません。だからこそ、直接会って話したことで、気がついたことが大きかったようです。今まで政治にまったく興味のなかった学生が、会って話した政治家をその後テレビで見るたびに、「私はこの人と会って話したんだ」と親に自慢するという話を聞いて、「これでいいんだ!」と思いました。
それだけでなく、参加した国会議員の方から、今後も続けてほしいという声がたくさん集まったのです。また、地方から参加したいと学校単位で名乗り出てくれるところが出てきたり、「参加をきっかけにわが子が大きく変わった」と喜ぶ親御さんの声が聞けたりと、想像以上の反応がありました。正直、ここまで影響があるとは思いもしませんでした。
僕自身にとっても、その後はどこに行っても「『高校生100人』の青木君」と政治家の方々に声をかけてもらえるようになりました。また、これが縁で、選挙前に連絡をくれる議員さんが増え、「街頭演説をするんだけど、高校生がどんなことを考えているのかをアドバイスしてもらえないかな」などと声をかけてもらうことも。自分一人で小さく始めたことでしたが、今は少しなら政治の中に入れている実感がありますし、とてもうれしいですよね。
やっぱり、「ホンモノに会う」というのが成功のポイントだったように思います。今の日本の報道だと、「政治家=悪」みたいに語られることが多く、イメージが悪い。でも、会ってみたら実はアイドル好きだったり、スポーツばかりやっていた、などの意外な一面を知ることができ、身近に感じたんだと思います。
今の日本で政治に興味を持てないのは、仕方がないことかもしれません。なぜなら、生活の中に入ってこないことには興味が持てないのは当然だからです。文系の僕にとって、Technologyと言われてもピンとこないし、自分とは関係のないことのように思えてしまいますが、おそらくそれと同じことでしょう。だから、ささいなことでもいいので、自分が生活しているコミュニティの中に一度、政治というものを入れてみることで頭の片隅に残り、少しでも興味が持てるようになるんじゃないかと思っています。少なくともそれができたからこそ、討論会が多くの人に影響を与えることができたんだと思います。
■ 地方行政を学び、地方自治体のトップを目指す道も選択肢に
将来は政治家になりたいと思っていますが、選択肢は国会議員だけではありません。今最も興味のある「地方行政」を勉強して、地方自治体の首長を目指す道も検討しています。慶應義塾大学の政治学科を選んだのも、地方行政をきちんと勉強したいからで、特に総務大臣や鳥取県知事を歴任された片山善博教授に学びたいと思ったからです。
「高校生100人×国会議員」についてはフレームが作れたので、同じく団体で取り組んでいる、「模擬選挙」と合わせて、今後の運営は後輩たちに託していきたいと考えています。
僕自身の今後の活動としては、地方自治体の首長さんと連携して、地方行政における地域活性化のための政策づくりにかかわっていきたいと思っています。特に少子高齢化の問題については、日本は世界に先駆けて進んでいますが、これは言い換えれば、自分たちで世界に対して解決モデルを提示できるということ。世界に対して選択肢を与えられる可能性が増えるわけですから、すごいことができそうですよね。
これまでの約1年半、夢中で政治のことに取り組んできました。最初は何もわからずに手探りでやってきて、挫折も経験しました。でも今では、ただ外野から好き勝手言っている高校生ではなく、選挙前に電話をもらえたり、政党の会議に出席させてもらうなど、対等に意見を求められることも増え、大人たちと同じ目線で見てもらえるようになりました。今後も常に、「10代の気持ちを代弁する」気概で取り組んでいきたいと思っています。
そして、1年半でここまで来られたのなら、あと5年、10年と頑張れば、どんなことができるのだろうかと、実はワクワクしているんです。もっとできることがたくさんあるんじゃないか、そんな気持ちでひたすら前に進んでいます。
■ 青木さんに10の質問
Q1.好きな異性のタイプは?
何を考えているかわかりにくい人にひかれます。あとは、人として尊敬できる人ですかね。
Q2.影響を受けた本は?
村上龍さんの本が好きです。特に『希望の国のエクソダス』。
Q3.好きな食べ物は?
肉。特に焼き肉! 自炊するのも好きですよ。
Q4.携帯電話に登録してある友人の数は?
ざっと数えて500人くらい。Facebook、Twitter、LINEでつながっている友人を合わせると、3000人は超えると思います。
Q5.行ってみたい国は?
パプアニューギニア。のんびりとした場所に行き、現代社会から解き放たれたいです。たまに気分転換で島巡りに行くのが好きで、最近は佐渡島や瀬戸内海の島々を旅行しました。写真は佐渡島行きのフェリーで撮影したものです。
Q6.尊敬する人は?
ジョン・F・ケネディ氏。死んだ今も語り継がれるカリスマ性に激しくひかれます。
Q7.一番会ってみたい人は?
総理大臣。「高校生100人×国会議員」という企画をもってしても会えなかったのが、総理大臣でした。少しの間でも一緒に過ごしてみて、意外な一面をのぞき見したいです。
Q8.よく行く場所は?
終電間際の新宿駅です。サラリーマン、酔っぱらい、ホームレスなどあらゆる人が雑踏に混在しているのは、まるで社会の縮図のようだと眺めてしまいます。そして、ホームレスの方々を見て、「政治とは、本来は彼らのような人をなくすためのものだ」と再確認し、背筋をピンと伸ばします。
Q9.宝物は?
ものには執着しないので、特になし。
Q10.座右の銘は?
「常に感謝」。小さいころから母親に、「『常にいろいろな人に支えられているから今がある』という気持ちを忘れないようにしなさい」と言われてきました。
■ 一日のスケジュール
取材・文/志村江 撮影/刑部友康