散るろぐ

みんなそこそこつらい(´・ω・`)

【圧倒的絶頂論】人は死を覚悟した瞬間に生まれ変わる。物質と資本の虜囚を打ち砕き、調和を最大限に引き出せば自ずと人生の固定概念を解き放ち既成の常識を爆破できる-ちるど通信


私は肌を切るような冷たい風に吹かれて今、北海道の宗谷岬にいる。 九州の博多から着の身着のままで飛び出した時点の所持金は0。そして現在も無一文。つまり私は1円も持たずに僅か7日で2238キロを踏破し、日本の最北端、極北の地へ辿り着いたのだ。数奇な旅路の歯車が死を覚悟した瞬間に静かな音を立てて回り始めた。


北海道行きを決意したのは仕事を辞めて3日目の朝だった。その3日間、私は一睡もできずに考え続けていた。某大手金融機関の末端に20年間勤務し通帳には1000万の残高があった。私はそれを元手に事業を起こそうと考えていたが、98時間一睡もせずに思考し続けてあるひとつの啓示を得た。


http://www.flickr.com/photos/25691430@N04/2691336577
photo by saturn ♄


20年もの歳月を数字に捧げた私は、残された人生までも数字に囚われてしまうのかと。その瞬間から私は私である為に資本と物質を破壊し人間が本来あるべき姿に戻ろうと圧倒的に決意した。まず500件にのぼる友人に片っ端からから電話しまくり1000万を引き取ってほしいと懇願した。238件目の友人は「生きろ」と言った。それでも諦めずに電話し続け最後の500件目に到達した。しかしその全てが断られた。返ってきた言葉は全て「生きろ」であり私の浅薄な意図は見透かされていた。つまり私は全てを放棄して圧倒的な死へ向かおうと決意していたのだ。


私の友人500人がひとり残らず1000万より私の命を圧倒的に選択した。その事実に私の人生観と涙腺は崩壊し、揺るぎない生存感が全身を雷鳴のように突き抜けた。完全感覚とでも形容しうる至高の幸福感に包まれれ、私は死と生を同時に決意した。死にながら生きるのではなく、生きながら死を超越する圧倒的絶頂論を胸に刻み込んだ。


生きることを決意した私は、iPhone6+を叩き割り1000万の通帳を握りしめ、20年来の恋人宅に直行した。玄関を開けると私達はその場で立ったまま抱きしめ合い、立ったままキスし、立ったまま愛を交わした。そして私は、会社を辞めたこと、500人の友人に電話したこと、圧倒的絶頂論の一部始終を一片の偽りもなく語った。高校生の彼女は号泣した。それは私の決意を圧倒的に支持する感涙の嬉し泣きだった。私は泣きながら眠ってしまった彼女を抱き上げベットに横たえた。そして額にやさしく別れのキスをした後、ベットサイドのアンティークランプの元に1000万の預金通帳と共に暗証番号をメモしたクリスマスカードを添えた。


彼女の家のドアをそっと閉めると、私は無限の世界に踏み出した。いまの私は何者でもないひとりの人間だ。身につけているのは、サッカージャンキーのヘザーブルーのTシャツ、履き潰したアルマーニジーンズ、古びたビーサンのみ。金は一銭も持たない、千原蓮という名を持つ唯一の人間だ。何者でもない千原蓮の名を持つ者。不思議な高揚感が全身を駆け巡り、試される大地へ旅が始まった。旅の途中私はひとりの20代女性と博多駅で知り合った。彼女は私の決意と生き方に激しく共鳴し、なにか手伝えることはないかと尋ねた。私は即座にその申し出を断ったが、彼女も一歩も引かない。私のためならなんでもすると云うのだ。とうとう根負けした私は彼女を必死で説得し、新幹線で下関まで同行するのを許した。グリーン席の車中では私を求める彼女をなだめるのに必死だった。私に跨り腰をゆらし恍惚の表情を浮かべる彼女は美しかった。だが私の決意が揺らぐことはなく、下関駅で下車した瞬間にワタシは全力疾走した。泣き叫ぶ彼女の声を背中で受け止めながら、山陽道をただひたすらに疾駆した。


どれくらい時間が経ったのだろう。日が暮れて辺りは真っ暗になっていた。海からの風が間断なく吹きつける橋脚の上に佇み、私は空を見上げた。漆黒の闇に星達が煌めきその全てが私の人生に祝福のカンパネラを唄っていた。月は真円の姿で夜空から私を照らしている。圧倒的絶頂論は完璧に肯定された瞬間だった。私はその透き通った空気に全身を包まれ宙を漂っている。そのとき前方から10トントラックが絶叫のようなブレーキ音を響かせ私に突進してきた。


死を覚悟した。閃光のような10トン車の巨大なライトがみるみるうちに眼前に迫ってきた。しかし私に恐怖はない。この目で己のからだが木っ端微塵になるのを見届けてやろうと思った。200キロのスピードで飛び込んでくる10トン車がスローモーションに見えた。過去に抱いた100人あまりの女の顔が猛スピードで脳裏を流れていく。私はここで死ぬのか…。


妄想は続く。


87653258人のFaceBookerがこの物語に「いいね!」と言っています。
34765328人のTwittelが「共感♪」をつぶやいています。