私がいた田舎はその地域に保育園は一つしかなく,小学校もひとつで,小学校のクラスもひとつ,中学校もひとつという田舎だった。だから保育園がいっしょの子どもと中学校まで一緒になる,そんなところだった。
保育園の時にガキ大将がいた。だれも彼に逆らえなかった。だから彼が「無視しろ」と言えば,みんな彼に従って無視した。私は彼に従って無視するよりも無視されることが多かった。運動や勉強がそこそこできたので,それが嫌だったのかもしれない。
私の地元は田舎だから親同士はほとんど知り合いだった。そのガキ大将の父親と私の父親は中学の同級生。とてもいじめなんて相談することはできないと思った。また弱い自分を見せるのも嫌だった。
それで私はそのガキ大将に嫌われないようにと笑顔でいることに努めた。何をされても笑顔でいる。そうすれば相手が許してくれるのではないかと思った。無視されないと思った。だからいつも笑顔でいた。
幸いなことにそのいじめは小学校4年生で終了した。そこからいじめられるということはなくなった。でもいつも笑顔でいるというクセはそのまま残った。
中学校に上がってもそのクセは治らなかった。だから中学の先輩に不真面目だと思われて殴られたこともある。私は怒られているときも笑顔が出てしまうのだ。中学時代,そのクセは治らなかった。
それは高校生になっても変わらなかった。その頃には私は明るい人というイメージになっていた。でもそれは作られた明るさ。だから一緒にいても楽しいと思われなかった。その結果,相手の期待に応えようといろいろと無理をした。それを相手が期待していたから。そうやって相手の顔色を窺う生活を生活をずっとしてきた。
大学生になって,地元を離れ地元のしがらみがなくなった。だから今までよりも自由になれると思った。それで相手に合わせるのを止めた。そしたら今度は自分勝手だと言われた。だから笑顔だけは絶やさないようにして周りとの軋轢を産まないようにした。ここでも何も変われなかった。相手の顔色を窺って行動していた。
バイト先で今の妻と出会った。出会った時はいつものように私はとてもよくしゃべった。いつも笑顔でいた。でも今はそんな努力をしなくても良くなった。妻も息子もよくしゃべり,よく笑う。私はそれを見ているだけでよくなった。相手に合わせるだけではなくなった。やっと自分は作られた笑顔から解放された。
今でも妻は「もっとしゃべる人だと思ったのに」と言う。それに対して私は「代わりにあなたがしゃべってくれるから良いんだよ」と言っている。そしてこれが本当の自分だと思う。今は「愛想がない」と妻に怒られているのだけれども…。
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