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 名鉄百貨店は、三越伊勢丹ホールディングス(HD)とのクレジットカード事業での提携を打ち切る方針を固めた。現在は三越伊勢丹HDの店舗でも優待を受けられるが、早ければ2016年度にも打ち切る。代わりに親会社の名古屋鉄道が発行するカードを導入し、名鉄グループとして顧客囲い込みを進める。

 関係者によると、名鉄百貨店はすでに三越伊勢丹HDに打ち切り方針を伝えたという。優待の割引率は前年度の買い物実績で決まるため、利用者が不利にならないよう移行期間を置く。名鉄発行の「名鉄ミューズカード」への移行は早くても16年度になる見通しだ。

 現在の「名鉄百貨店アイカード」は伊勢丹との提携で06年に導入され、優待も共同で実施。08年の伊勢丹と三越の経営統合後、名古屋地区では名古屋三越も加わった。今回のカード事業での提携打ち切りは、両社の関係の先行きに影響を与える可能性もある。

 名鉄が今年3月に導入したミューズカードは、駅の商業施設など名鉄グループで利用するとポイントがつく。IC乗車券の「manaca」に移して使えるのが売りという。

 名鉄百貨店は、伊勢丹と業務提携した05年以降、カード事業での協力だけでなく、幹部の派遣を受け入れ、店舗運営のノウハウを導入してきた。06年には、伊勢丹新宿本店を手本にした紳士服売り場「メンズ館」をオープン。伊勢丹と三越の経営統合後も提携は続き、ニットなど女性向けプライベートブランドの共同開発を進めてきた。

 ただ、提携関係を巡る環境は変わりつつある。三越伊勢丹HDは今年2月、名駅地区で建て替え工事中の大名古屋ビルヂングに中型店舗を来秋出店すると発表。名鉄百貨店は「客層が違い、食い合わない」(首脳)とし、カード事業以外での提携を維持する考えも強調するが、両社のすみ分けは難しくなりつつある。

 27年にリニア中央新幹線が開通する名駅地区では、高層ビルの建設ラッシュが続き、商業施設も増える見込みだ。名鉄百貨店など既存の百貨店が、戦略の見直しを迫られる状況は当面続きそうだ。(大隈悠)