英語圏が圧倒するE-Bookの世界市場

climate-change_1509200c調査・コンサルティング会社のPricewaterhouse Coopers (PwC)は、世界のE-Book市場を概観・予測する年次レポートの2014年版を発表した。普及のペースは国ごとに異なり、英語圏ではE-Bookの売上構成比が商業出版物の2分の1から3分の1の間になったのに対して、大陸欧州では大きく遅れ、日本では15%になったと推定している。

消費者主導の米英、エリート主導の仏独、マンガ主導の日本

PwCの推定では、フランスが8%、ドイツとイタリアは4%以下、スウェーデンとノルウェイは1%。中国とインドは各3%。New York Timesの紹介記事 (By StephenN Heyman, 11/12)は、ウィーンのコンサルタントRüdiger Wischenbartのコメントとして、E-Bookがかなり普及しているスウェーデンが少ないのは、公共図書館の貸出が利用されているため、という説明を引用している。

同じく、フランスやドイツが低いのは、読書がもっぱら知的エリートのためのものであり、「彼らは新奇なガジェットによってその文化的優位を失いたくない」ためだという。欧州のE-Book普及の最大の障害は価格で、印刷版への影響を怖れる独仏では高い各設定が維持されている。両国でのベストセラー小説の平均価格は、英国の9ドルの2倍以上の20ドル。これはいわゆる「禁止的価格」(prohibitive price)というものだろう。こうした傾向が続けば、英語圏は本の大衆化によって世界を圧することになる。

このロジックを借用すれば、知的エリートが弱い日本で、E-Bookの普及が相対的に早い理由も説明できるかもしれない。日本のコンテンツの大部分はマンガを中心としたもので、出版社もここで稼ごうと考えている。本流であるはずの文芸書や「ものの本」は極めて少ないか、あっても高価格。お金のない「文弱の徒」は古書店を漁って渇望を癒すしかないということか。

ところで、PwCレポートのドイツ市場の推定は、今週号の記事(「ドイツTolinoがアマゾンを破る」)におけるGfKの推定(1.6億ユーロ)とはかなりズレている。ドイツがフランスより低いとは信じられない。また、PwCは米国におけるデジタル比率が50%になる“ゴール”を3年連続してずらした。つまり2012年に2016年、2013年に2017年としたのに続いて、今年のレポートで2018年としている。この予想は難しいというより不可能に近い。ノン・フィクションのデジタル化のスピードにかかってくるからだ。未来は過去の直線的な延長上にはない。(鎌田、11/20/2014)

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