阪神大震災:被害免れた原液 20年かけた熟成ソース完成

毎日新聞 2014年11月21日 20時45分(最終更新 11月21日 22時07分)

「20年仕込み」のソースセットを手に笑顔を見せる道満雅彦社長=神戸市中央区で2014年11月21日、宮武祐希撮影
「20年仕込み」のソースセットを手に笑顔を見せる道満雅彦社長=神戸市中央区で2014年11月21日、宮武祐希撮影

 阪神大震災で本社工場が焼失した食品会社「オリバーソース」(神戸市)は21日、被害を免れたタンクに残った原液で作った20年熟成のソースが完成したと発表した。同社で唯一犠牲になった社員が震災4日前に仕込んでいた原液で、今回の限定約2700セットで全て使い切る。25日から予約を受け付け、震災20年の来年1月17日に発売する。

 同社は震災で壊滅的な被害を受けたが、焼け残ったタンクに原液約5トンが残っていた。出勤途中に亡くなった開発担当の男性社員(当時41歳)が仕込んでいたものだった。

 1997年に新しい本社・工場でソース作りを再開。供養を兼ねて丁寧に熟成させ、2005年と10年にそれぞれ限定販売した。最後となる今回は「クライマックス二十年仕込みソースセット」(税抜き4630円)。ウスター▽どろ▽とんかつの3種類で、深みとコクのある味に仕上がったという。

 道満(どうまん)雅彦社長(61)は記者会見で「つらい時期もあったが、原液を使い切るまでの20年で会社は復興できた。震災の負の遺産を振り返るのをやめ、未来を向いて進みたい」と話した。収益は東日本大震災の遺児のために寄付する。通信販売でホームページ(http://oliversauce.com)から予約できる。【久野洋】

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