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【北朝鮮情勢】
正恩氏が在外公館に特別査察団派遣を指示、狙いは国家保衛部の不正調査…基盤揺らぐ拉致再調査
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)第1書記が在外公館や貿易機関の特別査察を指示し、朝鮮労働党の中枢組織幹部をトップとする査察団を海外に派遣していたことが20日、複数の消息筋の話で分かった。粛清した張成沢(チャン・ソンテク)派の捜索とともに、公館幹部らを監視するはずの秘密警察、国家安全保衛部員による不正を調査するのが狙いという。拉致被害者ら日本人調査を主導する保衛部の足元が揺らぐ事態となっている。(桜井紀雄)
北朝鮮の海外幹部と接触した消息筋らによると、金第1書記名の「特別指示」は7月ごろ出され、幹部人事など絶大な権限を握る党組織指導部の課長級を団長とする特別査察団をロシアや中国、東南アジアにある大使館など公館や貿易機関に派遣。抜き打ち調査が進められているという。
本来、海外で活動する幹部らの監視は各公館に配属された「安全代表」と称する保衛部員が当たり、党中枢の組織指導部が査察に乗り出すのは極めて異例だ。
ロシアや中国では、金第1書記の秘密資金を扱う銀行幹部による約500万ドル(約5億9千万円)の持ち逃げや幹部の第三国への亡命が相次いだ。にもかかわらず、不祥事を摘発するはずの保衛部員が外貨稼ぎの機関職員らから賄賂を受け取り、不正を見逃してきた実態が浮上、組織指導部の直接介入を招いたとされる。
査察は年内にも終了し、昨年末に処刑された張成沢氏一派や亡命事件との関わりに加え、贈収賄など不正が判明した海外職員は、保衛部員を含め、本国に召還され、処罰される見通し。