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 青森県太平洋沖を震源とする東日本大震災並みの巨大地震が発生した場合、津波などにより県内で最大2万5千人が死亡するという被害想定を県が20日に発表した。被害の拡大を避けるため、県は早めの避難を呼びかけている。

 県は東日本大震災を受け、将来大きな被害を与えると想定される地震・津波の調査に2012年度から着手。佐藤魂夫(たまお)・元弘前大教授が委員長を務める検討委員会の助言を受けながら、太平洋沖、日本海沖(いずれも海溝型地震)、青森市の南北を走る入内断層での内陸直下型の3ケースの結果をまとめた。太平洋沖の被害想定では、人口約24万人の八戸市は死者が1万8千人と死者全体の約7割を占め、発生直後の避難者数は同市人口の3分の1の8万人に及んだ。

 太平洋沖の地震規模は東日本大震災並みのマグニチュード9・0と想定。沿岸の全市町村で震度6弱以上となり、六ケ所村の一部では震度7となった。県中央部は震度5弱~5強が広く分布しているが、県西部の岩木川沿いでは震度6弱となった。

 津波は東通村と六ケ所村に最短で37分、八戸市に44分で到達。同市の河口付近では、秒速10メートル以上で逆流しながら陸域に広がっていく分布も示された。

 最も被害の多い冬の深夜の想定で、死傷者は4万7千人(県人口の約3%)、建物全壊は7万1千棟(県全体の約12%)に及んだ。死亡の原因は津波が2万2千人と9割近くを占めたほか、火災(1700人)、建物倒壊(1600人)が多い。

 県はその対策として減災効果も分析した。津波による死者2万2千人は、全員が徒歩で避難したという想定で、発生5分後に2割、15分後に5割、津波到着後に3割が避難を開始したとして算出している。これが5分後に全員が避難を開始したとすると、死者は1800人と9割以上減った。また、建物の耐震化率を現在の約67%から90%に進めれば、揺れが原因で倒壊した建物は2万4千棟から4500棟と8割以上減ると算出した。

 一方、今回の試算で震度7となった六ケ所村尾駮地区は日本原燃の核燃料サイクル施設が立地する。太平洋沿岸には東通原発など原子力施設が集中するが、原子力災害は今回の想定には含んでいないという。

 日本海沖の地震(マグニチュード7・9)の死者は深浦町の1500人を含む計3300人で、津波による死者がほとんどだった。内陸直下型(同6・7)の死者は青森市の2500人を含む計2900人で、建物倒壊が1200人と最も多かった。

 県防災消防課は今回の結果を「かなり厳しく見た想定」としている。担当者は「特に津波は直ちに逃げることで、助かる命が多くあることを知ってほしい」と話す。

 今回の結果はすでに市町村には説明をしているといい、今後の防災や減災対策につなげたいという。八戸市の小林眞市長は「犠牲者を限りなくゼロに近づけるため、早期避難の周知や避難計画の改訂、さらには避難タワー、避難ビルの整備を早期に進めていく」というコメントを出した。(石塚広志)