大阪市児相:虐待急増、保護施設満員 一般家庭に100人

毎日新聞 2014年10月30日 07時30分(最終更新 10月30日 09時49分)

大阪市で虐待を受け一時保護された子どもの人数の推移
大阪市で虐待を受け一時保護された子どもの人数の推移

 保護者らから虐待を受け、「大阪市こども相談センター」(児童相談所、中央区)に一時保護される子どもが急増している。2008年度は延べ195人だったが、13年度は延べ722人と過去最多となった。保護施設は満員で、昨年度は一般家庭約50世帯に延べ約100人の子どもを委託する異例の事態になった。市は今年4月、新たな保護施設1カ所を開設したが、それでも満員になっており、現場からは更なる一時保護施設の増設を求める声が上がっている。

 センターは児童福祉法に基づき、虐待を受けるなどした2歳以上18歳未満の子どもを2カ月をめどに一時保護する。住民からの通報をもとにセンターの職員が保護が必要だと判断したり、警察からの依頼で保護したりするケースが多い。非行や家庭内暴力を振るう子どもらも入所している。

 虐待による大阪市での一時保護数は年々増加。70人が入所できる中央区の保護施設1カ所では収まりきらなくなり、今年、30人が入居できる施設を市南部に新たに設けた。

 児童福祉法では保護の委託先について明確な規定はなく、保護施設が満員の場合は通常、児童養護施設や障害児施設、里親認定された家庭などに委託する。しかし、12年度以降はこれらの施設も満員で委託できない状態に。背景には虐待事件が相次ぎ、市民の間に虐待への認識が広まり、通報が増えたことがあるとみられる。

 センターは12年8月、受け入れに協力してくれる家庭を募り、約50世帯が協力を申し出た。12年度には延べ約50人、13年度は延べ約100人が一般家庭で保護された。今年度は新たな施設ができたため、昨年度より減少傾向にあるが、4〜9月に延べ34人が一般家庭に委託されている。

 センターの阪脇裕二所長は「保護施設で子どもを観察した方が、精神状態などを細かく把握できるが、空きがない。保護施設の増設が必要だ」と明かす。厚生労働省雇用均等・児童家庭局の担当者は「これだけの規模で一般家庭に委託する例は聞いたことがない」と話す。

 厚労省によると、13年度に虐待が疑われ、市こども相談センターへ通報があったのは3193件で、児相への件数としては政令市で全国ワースト2。3724件で最多の横浜市には一時保護施設が4カ所(定員161人)あり、13年度は延べ577人を一時保護したが、一般家庭への委託はなかった。

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