かつて「世界の半分」と謳われ、今も数多くの歴史遺産が残るイラン中部の古都イスファハン。この町で、信号待ちをしていた女性ドライバーなどが車窓から強酸性の液体を浴びせられ、顔などに大火傷を負う事件が、この秋だけで4件も発生した。近年イランで増加しているアシッドアタック(酸攻撃)の実情について、イラン警察のアフマディーモガッダム司令官は19日、国内で年間600件から700件ものアシッドアタックが起きていると発表し、国内メディアを騒然とさせた。(大村一朗)
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準国営ファールス通信が伝えたところでは、アフマディーモガッダム司令官は、イスファハンでの酸による連続通り魔事件の犯行は、グループや組織ではなく個人によるものであり、そのため容疑者の特定が難しく、一ヶ月以上が過ぎた今も犯人逮捕に至っていないと釈明した。
かつてこの事件を大々的に取り上げた海外メディアは、被害者の女性たちがイスラムの服装基準である「ヒジャブ」を正しく着用していなかったことから、保守過激派の標的にされた可能性が高いとして、この事件の「宗教性」を強調した。そして、イランの過去のアシッドアタックの事件を振り返り、アシッドアタックがイスラム共和国の女性蔑視を象徴する犯罪であり、イラン特有の出来事であるかのように報じるメディアもあった。
こうした海外メディアの報道に反発した国内の保守系メディアは、アシッドアタックがインド、バングラデシュ、アフガニスタン、カンボジアなどのアジア諸国や南アメリカ諸国で、それぞれ年間数十件から数百件発生しており、イギリスにおいてさえ2011年から12年にかけて105件も発生しているとして、イランの発生件数が取り立てて多いわけではないと反論した。
ところが、こうした報道を知ってか知らずか、事件の発生したイスファハンで、アフマディーモガッダム司令官は、イランでのアシッドアタックの実際の年間発生件数が、保守系メディアの報じたものを軽く一桁上回ることを明らかにしてしまった。同司令官によると、アシッドアタックはイラン国内だけで年間600から700件発生しており、イラン暦の今年上半期だけですでに約380件が報告されているという。国内の多くのメディアが同日、いっせいにこのニュースを報じた。(続く)
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