衆院選:波紋広げる安倍首相の勝敗ライン「与党で過半数」

毎日新聞 2014年11月19日 21時57分(最終更新 11月20日 08時15分)

近年の衆院選で政権与党が掲げた勝敗ラインと選挙結果
近年の衆院選で政権与党が掲げた勝敗ラインと選挙結果

 ◇自民党派閥幹部「数十議席減らすと宣言したようなものだ」

 安倍晋三首相が18日の記者会見で、衆院選の勝敗ラインを「与党で過半数」(238議席)と明言したことが与党内に波紋を広げている。現有議席は自民が295(伊吹文明衆院議長含む)、公明が31の計326議席で、「数十議席減らすと宣言したようなものだ」(自民党派閥幹部)などと不安の声が噴出。与党幹部らは19日、目標を「270議席以上」と上方修正を図り、混乱の収束に乗り出した。

 菅義偉官房長官は19日の記者会見で「政府の立場は首相が言ったことが全てで、与党で政策を遂行する意味で過半数というのは当然だ」と強調した。

 次期衆院選(12月2日公示、14日投開票)は1票の格差是正のための「0増5減」で衆院の定数が480から475に減る。単純比較はできないが、90議席近くを失っても「勝利」を宣言できる計算となる。目標のハードルを下げることにより、首相の続投を確実にする意図があったものとみられる。

 だが、野党からは「首相が自信を失っている。ニゲ(逃げ)ノミクスだ」(維新の党の松浪健太国対委員長)などの指摘が一斉に上がった。身内の自民党からも「そこまで自信がないのか」(自民党幹部)と冷ややかな声が出た。

 自民党の谷垣禎一、公明党の井上義久両幹事長ら幹部は19日朝、東京都内のホテルに集まり、目標を「与党で270議席以上」とする方針を確認。首相が示した過半数(238議席)を事実上、上方修正した。与党が全ての常任委員会で委員長を出し、委員数も野党を下回らない「安定多数」は249議席、さらに委員長ポストを独占し、委員が過半数を占める「絶対安定多数」は266議席。270議席は、余裕を持って絶対安定多数を確保することを念頭に置いた目標だ。

 ただ、それでも自民党内から不安の声がやまず、自民党の大島理森前副総裁は同日昼、記者団に「全員が当選できる環境を作ることが責務で、今の時点で何議席という話は早すぎる」と指摘。別の同党幹部も「(目標は)一議席でも多くだ。勝敗ラインなんてあまり口にしない方がいい」と苦言を呈した。

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