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船長1人に「死の償い」を求め続けた韓国世論の異常
セウォル号事故の憤怒の深奥が日本人に見えない理由
――ジャーナリスト・中島 恵

中島恵
【第526回】 2014年11月21日
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 「韓国で大統領の権限が異常に強いのは、王朝の時代からの朝鮮民族の伝統だと思います。高麗、朝鮮王朝は合わせて1000年にもなりますが、王様には絶対的権限と権力を与えられてきました。その代わり、巷で伝染病や飢饉、天変地異などが起きても、災いは全て王様の責任だとされてきた。この国にはそうした社会的背景と文化があり、その影響だと思います」

 韓国の歴史ドラマなどを見ていても、王様の権力が驚くほど絶大なのはよく理解できる。王様の病が治せない主治医は殺されてしまい、国家の権力が王様1人に集約され、全ての富を手中に収める代わりに、悪政を行えば無残な最期を遂げることもある。

 王様の外戚になれば権力のおこぼれに預かることができ、甘い蜜も吸えるとあって、王様に近づく両班(貴族)は後を絶たず、反対勢力と権力闘争になる。韓国の歴史ドラマが面白いのは、対立の構造が非常にはっきりしているからだ。

歴史的に続く恐ろしいほどの一極集中ぶり
現場に権限がなく対応が遅れたという理屈

 それは、現代の大統領の親族が汚職などで逮捕され、任期中に大統領がレームダック化したり、退任後に自殺したりする姿ともだぶって見える。韓国の大統領は1987年から国民の直接選挙で選ばれるようになっており、権力が一極集中することにより、ヒト、モノ、カネを手にする大統領はまさに「現代に君臨する王様」だと言える。

 その極端とも思える国家の構造が、いまだに崩れないで維持されているのは、韓国が北朝鮮と対峙する緊張状態にあるということも関係しているのではないか。北朝鮮とは休戦状態であり、決して“平和”ではない韓国では、常に安全保障が最優先課題となるため、大統領には軍の最高司令官という権限も与えられている。大統領の任期は5年で1回限りであり、再選はできないが、5年間は権力がたった1人に集中し、大統領の指示によって国の全てが動くようにできている。

 恐ろしいほどの一極集中だが、韓国では初代大統領の李承晩(イ・スンマン)の時代から大統領は絶対的な支配者だった。議院内閣制で、話し合いを重ねて、何事も調和しながら物事を決定していく日本式スタイルとは異なり、全てをトップが決めるやり方だ。

 あとを継いだ朴正熙(パク・チョンヒ)大統領も、開発独裁、権威主義を貫き、韓国経済を飛躍的に成長させ「漢江の奇跡」を実現させたが、圧政により国民を苦しめた面もあった。彼はKCIA(韓国中央情報部)の幹部に暗殺されるという、非業の死を遂げた。朴槿恵大統領はその愛娘であり、さしずめ“現代版の王女様”と言えるかもしれない。

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