中間貯蔵施設:地権者、半数連絡つかず…大熊、双葉町
毎日新聞 2014年11月19日 15時00分(最終更新 11月19日 15時10分)
東京電力福島第1原発事故で出た汚染土などを保管するため、環境省が福島県大熊、双葉両町に建設する中間貯蔵施設の土地契約交渉が進まない。避難により、地権者の行方が分からないケースが多発しているためだ。登記簿上の地権者2365人のうち、連絡先が判明したのは1300人程度。目標とする来年1月搬入開始は極めて困難な状況だ。
中間貯蔵施設は、第1原発を囲むように両町の帰還困難区域16平方キロに建設予定。今年9月に県が受け入れを表明したのを受け、環境省は登記簿から地権者2365人を抽出したが、登記簿は震災後は更新されておらず、記載の住所も避難前のもの。町に避難先の照会を依頼したが、既に死亡していたり、住民票が町になかったりして、登記簿と町の資料で地権者情報が一致し、避難先が判明したのは1269人だった。
判明した地権者には地権者説明会の通知を郵送。このほか、報道などで知り、問い合わせてきた人が30人程いた。通常は建設地を回って住民や隣人から情報を得るが、全町避難が続く現状ではそれもできない。
「地権者の理解」を前提に県の受け入れ表明を容認した両町は、こうした現状を問題視。また、説明会に出席した地権者からも土地の補償額などに不満の声が上がっており、両町長は10月23日、小里泰弘副環境相に「地権者への丁寧な説明」を申し入れた。建設受け入れを正式に表明していない両町に配慮し、同省は連絡先が分かっている地権者との個別交渉も自制している。
同省の担当者は「町に納得してもらうためにも地権者の7割程度を割り出したい」と話すが、打つ手は乏しい。建設地の行政区長を頼って住民の情報を求めているほか、転送を期待して避難前の住所に通知を送ることを検討中。行方が分からない地権者に代わり、家庭裁判所が選任した弁護士らから土地を買い取るという、民法の「財産管理制度」も視野にあるが、「安易に使えば反発が増すだけ。最後の手段」と話す。
環境省は、施設が完成しなくても契約が済んだ土地に汚染土を仮置きする方針。それでも来年1月に搬入を開始するなら、入札など早急に土地整備の手続きに入る必要がある。今月7日、竹下亘復興相が計画の見直しに言及した。同省の関係者は「11月になっても土地が手に入る見通しすら立っていない」と漏らす。正式に搬入開始の延期を決めざるを得ないところまで迫られている。【喜浦遊、土江洋範】