ここ10年ほどの間で、日本人のクルマに対する意識は大きく変わってきた実感がある。中でも燃費に対する意識の変化は大きい。理由は簡単で、ガソリンの価格が高止まり傾向にあるからだ。
今でも鮮明に覚えているが、2008年8月にレギュラーガソリンの価格が1L当たり185.1円に達した頃、平日午前10時ごろの首都高速中央環状線が1カ所たりとも渋滞していないという衝撃的な光景を目の当たりにした。走ってみても文字通りガラガラに近い印象で、それだけムダにクルマ使ってた人が多いんだな……としみじみ思ったものだ。
そもそも10年前はガソリン、いくらぐらいだったっけ? と思って石油情報センターが公開している市中価格調査データを参照してみた。2004年1月〜12月のレギュラーガソリン1Lの価格は、最安期が100.1円、最高期で120.0円。通年の平均値では110.2円。対してここ1年ほどの間は、150円と170円の間を行ったり来たりしている状態だ。
1L当たり50円違うと、懐へのダメージが実感できるレベルになってくる。例えば40L給油した場合、113円/Lなら4520円なのに対し、165円/Lだと6600円。差額でレストランランチがイケてしまう感じだし、子どもが1人のファミリーならファミレスでのランチ1回分ぐらいに相当するかもしれない。こうなると、燃費性能に関心が向くのは当たり前の話だろう。
当然、自動車メーカーも市場意識の変化は理解していて、ほとんどの新型車で燃費性能をアピール材料にしている。また、自動車メーカーには燃費を改善しなければならない切実な事情もある。CAFE対応だ。
CAFEは“Corporate Average Fuel Efficiency”の頭文字を取った略称で、日本語では「企業平均燃費」と訳される。自動車メーカーに対して「販売するクルマ全体を平均した燃費が基準値を下回らないようにしなさい」という規制だ。
例えば商品ラインアップ中に20km/L走るクルマと10km/Lしか走らないクルマがある場合、「総販売台数の平均燃費が17km/L以上になるようにしなさい」と言われた瞬間、10km/Lしか走らないクルマは販売台数が制限されたも同然になる。
そしていまどき、燃費の悪いクルマというのは大型車だったりプレミアム車だったりスポーツカーだったりすることが多く、これらはメーカーにとって利幅が大きいという背景がある。つまり利幅を確保したいのなら、20km/L走るクルマを25km/L走るようにしたり、10km/Lしか走らないクルマをせめて13km/L走るようにするしかない。
CAFEに違反すると、企業名公表や罰金などの罰則がある。アメリカでは1978年モデルから導入されているが、2000年代に入ってからは環境意識の高まりによって世界各国で同様の規制導入が検討されている。中には罰則として販売台数制限を検討している地域もあり、燃費を改善しないとクルマを売ることができなくなってしまうかもしれないので、自動車メーカーにとっては文字通り死活問題なのだ。
そんな背景もあって、各メーカーは燃費性能向上へ懸命に取り組んできた。その努力がここ数年でやっと実を結んできた感があって、最近、試乗させてもらっているクルマは「おぉ、燃費いいなぁ……」と感心させられるものが増えてきた。では、実際にはどのぐらい燃費が良くなっているのか? 興味がある方も多いのではないかと考え、月1回ぐらいのペースでいろいろなクルマの実走テストをやってみようという話になった。