東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 筆洗 > 記事

ここから本文

【コラム】

筆洗

 骨の折れる仕事は世の中にあまたあるが、インドのニューデリーに住むカイラシュ・サトヤルティさん(60)は、文字通り骨を折っている▼まだ子どもなのに過酷な労働を強いられ、学校に行けない子を助け出すことに打ち込み、これまでに八万人を救出してきた。子どもらを安い賃金で酷使し、もうけている経営者にとって、サトヤルティさんは敵だ▼だから何度も襲われてきた。「脚も頭も背中も肩も、とにかく私は体中の骨を折られた。仲間二人は殺された。若いスタッフが袋だたきに遭うなんて、しょっちゅうだ」と語っている▼全世界では一億六千八百万人が、十八歳に満たないのに危険で有害な仕事をしている。十数年前に比べれば三分の二に減ったが、それでも驚くべき数だ。日本でも人気のスマートフォンやスポーツ用品が安く買える陰には、児童労働があるという指摘も繰り返されてきた▼サトヤルティさんの原点は子どものころに見た光景だという。同じ年ごろの子が学校に行けず、通りで靴磨きをしていた。「こういう問題に立ち向かわなくては…。これは、必ず合格しなくてはいけない道徳のテストだ」と考え続け、行動して、今年のノーベル平和賞に輝いた▼児童の酷使などを禁じた「子どもの権利条約」が採択されてから、きのうでまる二十五年たった。私たちはまだまだ、テストに合格しそうもない。

 

この記事を印刷する

PR情報





おすすめサイト

ads by adingo