福井県敦賀市の敦賀原発2号機直下にある断層について、原子力規制委員会の有識者会合が改めて「活断層」と判断した。

 事業者の日本原子力発電(原電)が独自調査をもとに再考を求めていたが、退けた。原電が再稼働を申請しても規制委は認めないとみられ、廃炉に追い込まれる公算が大きくなった。

 福島第一原発事故の教訓を踏まえれば、原発の安全審査は「疑わしきはクロ」を大原則とすべきである。支持したい。

 有識者会合は原電の調査結果を検証し、「活断層ではない」とする証拠としては不十分だと結論づけた。

 原電は「科学的判断とはとうてい言えない。反証したい」と徹底抗戦の構えだ。敦賀市長も「遺憾」との談話を出した。

 原電が持つほかの原発2基は運転開始から44~36年たち、再稼働に必要な規制基準をクリアするのは難しい。まだ27年の敦賀2号機は命綱だ。

 多くの市民が原発とかかわる敦賀市にとっても廃炉となれば死活問題である。

 だが原発の安全性は、そうした事情とは別に専門的見地から厳格に検討されるべきものだ。

 敦賀原発は建設後に敷地内で活断層が確認され、他の原発に比べても地震が起きる危険性は高いといえる。有識者会合の判断は、真っ先に影響を受けかねない地元住民を先んじて守るものとみることもできるだろう。

 廃炉にするかどうかの最終決定権はあくまで原電にある。

 安倍政権は原発再稼働をめぐり「規制委の判断を尊重する」と強調してきた。「クロ」判定も重く受け止め、原電に廃炉を促していくべきだ。そのための環境整備を急ぐ必要がある。

 廃炉経費は600億円を超すといわれる。放射性廃棄物の処理も難題だ。

 原電は57年、電力業界の主導で原子力開発を担う会社として発足した。株式の大部分は電力各社が保有している。

 今の原電は原発を動かしていないのに、電力5社からの「基本料金」で食いつないでいる。今年度も1100億円の見込みだ。これは電気料金の原価とされ、利用者が負担している。

 原電の先行きが見通せないまま、こんな仕組みをずるずると続けてはいけない。

 近い将来、国内で多くの原発が廃炉時期を迎える。すでに1基の廃炉に着手している原電を、廃炉専門機関に改組しては、との案も出ている。

 国は電力業界に働きかけ、原電の今後のあり方を協議していく場を早急に設けるべきだ。