ドワンゴ川上会長、「非リアは脳の問題です」

「ネットが生んだ文化」とは何か

全15巻におよぶ「角川インターネット講座」シリーズ(角川学芸出版)。その第4巻で11月に配本が始まった『ネットが生んだ文化(カルチャー)』を監修したのが、ドワンゴ会長の川上量生氏だ。ネット文化の本質とは何なのか。川上氏に聞いた。今回はその前編。

山田: いきなりの質問なのですが、こういうものを紙の書籍としてまとめることの意義をどのように考えていますか。すべてインターネットでやってもいいように思えます。

川上: 僕自身も含めてですが、現代人は本になっているかどうかで、信用度を判断する感覚を持っています。ネットにあるものは変わっていくものだし、いつもあるとは限らない。それに対して書籍というものは、ある知識が、ある時点で、ある完成品の形として固定されるわけです。そういうものに対して敬意を払うという習性を人間が持っているということは、人間社会をある知識体系を構築する情報システムとして考えた場合、重要なことです。知識のハブとなっている部分を書籍化するという行為は、まだまだ役割を持っていると思います。

山田: そう考えると、これがしっかり売れていくことが重要ですね。情報のアンカーとして紙の書籍の価値が受け入れられるかどうか。

川上: ここに書いてあることって、すでにネットの中で書かれているような話も多いのですが、紙の本としては世の中に出ていないことばかりです。実際、こういうたぐいの議論って、いわゆる知識人的な人はあんまり議題にしない。でも僕は重要なテーマだと思っているし、それをひとつの形に残せたのは良かったと思っています。

キーワードは非リア、コピー、炎上、嫌儲

山田: 本をまとめる上でのキーワードである、非リア、コピー、炎上、嫌儲は川上さんが選んだと聞きました。

川上: リアル世界の人がネットをわからないと思うポイントは、たぶんこの4つのキーワードに集約されていると思っています。

山田: 監修する過程で川上さん自身も知識や考えが深まる体験をしましたか。

川上: 結構ありましたよ。そういう意味では、今回書いていただいた方、これまで知らなかった方も何人かいらっしゃいますが、どの方の記事も面白かったです。監修者としてではなく、読者として面白かったですね。

山田: 現代のことだけでなく鎌倉時代からのコピー文化についても触れている。

川上: 歴史的な過程に触れているのもいい点です。連歌の話などは、ぼくも勉強になりました。こういう切り口でまとめた本はこれまでなかったと思います。

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