安倍首相がきょう、衆院の解散に踏み切る。

 この解散の遠因となったのは、9月の内閣改造後に噴き出した「政治とカネ」をめぐる数々の不祥事だろう。

 女性閣僚5人のうち、小渕前経産相と松島前法相の2人が同時辞任に追い込まれた。代わった宮沢経産相は、政治資金管理団体からSMバーへの政治活動費の支出が発覚した。ほかにも複数の閣僚が野党から追及を受け、来年の通常国会の運営が危ぶまれていた。

 政権を覆う暗雲を解散・総選挙で振り払う狙いがあるとすれば、ずいぶんと虫のいい話だ。小渕氏の問題には捜査の手が入り、とても幕引きとはいかない。選挙を経たからといって、済んだ話となるはずもない。

 解党するみんなの党の渡辺前代表ら野党の疑惑も指摘されていた。与野党を問わない問題なのに、うやむやにされかねない危惧がある。

 解散は、すべてを白紙に戻すリセットボタンではない。有権者を甘く見ないでほしい。

 最近はお金の「入り」だけでなく、不適切な「出」が問題となっている。政治資金の使い道の適正化が急務だ。

 どこからお金を得て、何に使っているのか。それは、政治家がどこを向いて働いているかの判断材料となる。総選挙は各党の姿勢を問う絶好の機会だ。まずは公約で、具体的な改善策を競ってもらいたい。

 国会議員に毎月100万、年間1200万円も支給されている「文書通信交通滞在費」は、領収書が不要で公開の義務もない。維新の党が、使途公開を義務づける法案を衆院に提出したが、黙殺された。

 経費が必要なら、上限を設けて実費請求にするなり、すべての支出への領収書添付を義務づけるなりすればいい。透明性を高めるのに何をためらうことがあろうか。

 負担増を求める時代、政治に甘い対応は許されない。

 しかし現実はどうか。経団連が献金呼びかけの再開方針を示すと、自民党は「大変ありがたい」と受け入れた。民主党は12年の政権公約で「企業・団体献金の禁止」を掲げていたが、翌年の参院選公約で削除した。

 年間300億円超の税金が政党交付金としてつぎ込まれ、受け取りを拒否している共産党を除く各党に支給されている。それなのに、政官業の癒着の温床と指摘されてきた企業・団体献金の見直しは進まない。

 選挙の喧噪(けんそう)にまぎれて、問題を素通りはできない。