消費税率再引き上げの延期と衆院解散が行われることを受けて、ここまでの安倍晋三政権の経済運営を中間採点しよう。
筆者が授業を持っている獨協大学の成績評価なら、60点台が単位を貰(もら)える最低点で「C」、70点台で「B」、80点台は「A」で、90点以上は「AA」となる。
今回の安倍政権が優れていた点は、デフレ脱却を最優先にすると、政策の優先順位が明確であったことだ。まず、マイルドなインフレが普通だと認識されるような経済環境を作らないと、不況に陥っても金利のゼロ制約のために金融政策が充分に効かない。
加えて、デフレだと税収は増えにくく、債務の実質的な価値が重くなっていくので、財政再建も難しい。
また、解雇規制の緩和や、農業・医療・介護などの規制緩和で成長を促すことの必要性が強調されて久しいが、これらの政策による新しいビジネスの喚起も、デフレ的な環境ではない方が望ましい。
金融緩和が効きにくい状況下にあって、インフレ目標プラス大規模な金融緩和の組み合わせを使って、政策に効果を持たせた。現実に消費者物価を、消費税率引き上げ分を除いても、はっきりと対前年比プラスに持ってくることができたのは、道半ばだが、大きな成果だ。
また、実体経済も明らかに上向いており、2013年度の国内総生産(GDP)は実質で2・2%の伸びを見せた。政権引き継ぎ時に4%台だった失業率も3%台半ばに低下し、有効求人倍率は1倍を超えて推移している。