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退去強制 [たいきょ-きょうせい](入管法24条、27条から55条)
退去強制は、国家が好ましくないと考える外国人を、その主権[しゅけん]に基づき国外に排除[はいじょ]する行政処分[ぎょうせい-しょぶん]です。簡単に言えば、日本にいる外国人に問題があると考えられる合理的な法に定める理由(退去強制事由[たいきょ-きょうせい-じゆう])があれば、国はその外国人を追い出すことができる ということです。
この手続きは出入国管理及び難民認定法[しゅつにゅうこく-かんり-および-なんみん-にんてい-ほう](略して「入管法」[にゅうかん-ほう]とよばれています)に定められています。
収容[しゅうよう]などの処分により自由が拘束されますが、刑事手続きではありませんのでその処分の前に裁判はありません。しかし、法律の定めにより調査や審査が行われ、弁解[べんかい]することができます。この入国審査官の違反審査から法務大臣の裁決までの一連の手続きを「違反審判」[いはん-しんぱん]とよび、裁判の三審制[さんしんせい]のように、容疑[ようぎ]があるとされた外国人の十分な主張と当局のそれに対する判断を求める仕組みになっています。
また、決定された処分が違法[いほう]であれば行政訴訟[ぎょうせい-そしょう]で争うことができます。
<上陸拒否期間>
日本から不法残留[ふほう-ざんりゅう]等を理由に退去強制された者や出国命令 [しゅっこく-めいれい]を受けて出国した者は、入管法の規定に基づき、原則として、下記の一定期間は日本に入国することはできません(上陸拒否期間[じょうりく-きょひ-きかん]とよばれます)。
- いわゆるリピーター(過去に日本から退去強制されたり、出国命令を受けて出国したことがある者)は、退去強制された日から10年
- 退去強制された者(上記を除く)は、退去強制された日から5年
- 出国命令により出国した者は、出国した日から1年
- 日本国又は日本国以外の法令に違反して1年以上の懲役 [ちょうえき]又は禁錮 [きんこ] 等に処せられた者や麻薬、大麻、あへん、覚せい剤等の取締りに関する法令に違反して刑に処せられた者は、上陸拒否期間に定めはなく、日本に上陸することができません
<退去強制手続きの流れ>
(フローチャート参照)
- @ 入国警備官[にゅうこくけいびかん]の違反調査[いはん-ちょうさ](入管法27条から38条)
退去強制事由(下記参照)に該当すると思われる外国人に対し、入国警備官による調査が行われます。
- A 収容令書[しゅうよう-れいしょ]による収容 → 入国審査官[にゅうこく-しんさかん]への引渡し(*)(入管法39条から44条)
退去事由に該当すると疑うに足る相当な理由があり、容疑ありとされた場合は収容され入国審査官に引き渡されます。収容する場合には緊急[きんきゅう]の場合を除き、収容令書を示さなければなりません。収容令書は@の調査にもとづき入国警備官が主任審査官[しゅにん-しんさかん]に請求して発付[はっぷ]されます。
ただし、出国命令対象者に該当すると認めるに足る相当の理由のある場合を除きます。
この段階から「容疑者」と呼ばれます。
(*)容疑者が刑事処分等により身柄を拘束されているとき(未決勾留[みけつ-こうりゅう]中,服役[ふくえき-ちゅう]中など)
この場合、入管法63条により収容令書により身柄を拘束しなくとも退去強制手続を行うことができ、容疑者を収容しないまま違反調査を行い、入国警備官から入国審査官に事件を引き継ぐことがあります。
- B 入国審査官による違反審査 → 退去強制該当者[たいきょ-きょうせい-がいとうしゃ]の認定(入管法45条から47条)
審査の結果、退去強制事由に該当しないと認定されれば、放免[ほうめん]され在留が継続できます。
該当すると認められ、Cの請求をせず認定に従う場合には、退去強制令書[たいきょ-きょうせい-れいしょ]が発付[はっぷ]されます。
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C 特別審理官[とくべつ-しんりかん]による口頭審理[こうとう-しんり]の請求 → 認定の誤りの有無判定(入管法48条)
Bの認定に不服[ふふく]がある(なっとくできない)場合には、特別審理官に口頭審理を求めます。
認定が誤りと判定されれば放免され、在留が継続できます。
認定に誤りが無いと判定され、Dの異議[いぎ](判定への不服)を申し出ず判定に従う場合には、退去強制令書[たいきょ-きょうせい-れいしょ]が発付[はっぷ]されます。
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D 法務大臣に対する異議[いぎ]の申し出 → 異議の理由の有無 裁決[さいけつ](判断)(入管法49条)
Cの判定に不服がある場合法務大臣に対し異議を申し出ます。
異議に理由があると裁決されれば、放免され、在留が継続できます。
異議に理由が無いと裁決され、特別に在留を許可する事情もない場合には、退去強制令書[たいきょ-きょうせい-れいしょ]が発付[はっぷ]されます。
裁決の特例 (入管法50条) : 在留許可[ざいりゅう-きょか]があたえられます(異議の申し出に理由があるか否かとは別の観点から行われる裁量による処分です)。
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E 退去強制令書[たいきょ-きょうせい-れいしょ]の発付
この発付により容疑者は退去強制させられることが確定した「被退去強制者」[ひ-たいきょ-きょうせいしゃ]となります。
出入国に関する制度をくわしく知りたい場合は法務省入国管理局HPへ
入管法に定める退去強制事由[にゅうかんほう-に-さだめる-たいきょ-きょうせい-じゆう]
出入国管理及び難民認定法(入管法)24条
適法[てきほう]に在留資格[ざいりゅう-しかく]を得た就学生・留学生であっても、以下のような場合には強制的に日本から退去させられます。
(禁錮[きんこ]・執行猶予[しっこう-ゆうよ]などの刑罰[けいばつ]の説明は刑事上の手続きを見てください。)
- 資格外活動[しかく-がい-かつどう]・不法就労[ふほう-しゅうろう]
入管当局の許可を受けずに、在留資格では認められていない収入を得る活動をもっぱらしていると認められた場合。
- オーバーステイ(不法残留)
更新[こうしん]・変更が無く、在留資格で認められた滞在期間[たいざい-きかん]を過ぎて在留した場合。
- 外国人登録法違反[がいこくじん-とうろく-ほう-いはん]
外国人登録法(略して「外登法」[がいとうほう])に違反して禁錮[きんこ]以上の刑に処せられた場合。(登録義務違反[とうろく-ぎむ-いはん]、虚偽申請[きょぎ-しんせい]、提示義務違反[ていじ-ぎむ-いはん]、不法行使[ふほう-こうし]など。但し執行猶予[しっこう-ゆうよ]の場合を除く)
- 少年法違反[しょうねん-ほう-いはん]
少年法(未成年[みせいねん]の刑事事件を対象とする法律)により長期3年を超える刑に処せられた場合。
- 麻薬取締法等違反[まやく-とりしまり-ほう-いはん]
麻薬取締法・覚せい剤取締法などの薬物事犯[やくぶつ-じはん]を規制する法に違反して有罪の判決を受けた場合(刑の重さにかかわらず、執行猶予でも)。
- 反社会性(社会の秩序[ちつじょ]に反する性質)が強い有罪判決
無期または1年を超える刑に処せられた場合(但し執行猶予の場合を除く)。ただし刑法の一定の罪・ピッキングなどについては禁錮以上でも該当。
- 売春関係[ばいしゅん-かんけい]の業務従事[ぎょうむ-じゅうじ]
売春に直接関係する業務に従事した場合(処分を問わず)。
- 不法入国・上陸の関与
他の外国人の不法入国または不法上陸をあおったり・そそのかしたり・助けたりした場合(処分を問わず)。
- 国家秩序[こっか-ちつじょ]を害する活動
政治的[せいじ-てき]な暴力的破壊活動[ぼうりょく-てき-はかい-かつどう]をした場合。
- 法務大臣[ほうむ-だいじん]の認定
法務大臣が日本国の利益または、公安を害する行為をしたと認定した場合。
* この他に退去強制の対象として、不法上陸者、仮上陸条件違反者、数次乗員の上陸許可取消しために指定期間内に帰船・出国しない者が規定されています(留学生にはあまり関係が無いと思われますので説明を省略します)。
くわしくは法務省入国管理局HPへ
出国命令制度 [しゅっこく-めいれい-せいど]
入管法24条の2、55条の2から6
2004年の入管法改正において、一定の要件を満たす不法残留者[ふほう-ざんりゅうしゃ]については例外的に身柄[みがら]を収容しない簡易な手続きにより出国させる「出国命令制度」が新しくできました。
出国命令対象者は,不法残留者(*)であることが前提ですが、加えて以下の5つの要件を全て満たしていることが必要です。
(*)入管法第24条第2号の3、第4号ロ又は第6号から第7号までのいずれかに該当[がいとう]する外国人です。退去強制事由のコラムの@〜IのなかではAオーバーステイが該当します。
- 出国の意思をもって自ら入国管理官署[にゅうこく-かんり-かんしょ]に出頭[しゅっとう]したものであること
- 不法残留以外の退去強制事由に該当しないこと
- 窃盗罪[せっとう-ざい]等の一定の罪により懲役[ちょうえき]又は禁錮[きんこ]に処せられたものでないこと
- 過去に退去強制されたこと又は出国命令を受けて出国したことがないこと
- すみやかに本邦[ほんぽう](日本の国)から出国することが確実とみこまれること
<手続きの流れ>
- 入国審査官[にゅうこく-しんさかん]は出国命令対象者に該当するか審査し、該当すると認定したときは主任審査官[しゅにん-しんさかん]に通知します。
- @の審査の結果、退去強制対象者に該当すると疑うに足りる相当の理由があるときは,そのことを入国警備官[にゅうこく-けいびかん]に通知するとともに、入国警備官に差し戻すものとされており、差し戻し後は退去強制の手続きが行われます。
- @で出国命令対象者に該当する旨の認定通知[にんてい-つうち]を受けた主任審査官は、容疑者に対し15日を越えない範囲で出国期限[しゅっこく-きげん]を決め、出国命令書[しゅっこく-めいれいしょ]を交付し、出国を命じます。この出国期限を過ぎて残留すると、退去強制および刑事罰[けいじばつ]の対象となります。
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