<衆院選>アベノミクス問う 進む株高、伸びぬ消費
毎日新聞 11月20日(木)21時28分配信
安倍晋三首相は衆院選で、アベノミクスへの評価を問う考えだ。集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈変更など、本来は重要な争点であるはずのテーマは「重大な政策変更ではない」(菅義偉官房長官)とし、企業業績や雇用の改善などの成果をアピールできる経済政策を前面に出す。
アベノミクス最大のインパクトは、「第一の矢」の異次元緩和を受けた円安・株高だ。これに公共事業などの「第二の矢」を加え、「第三の矢」の成長戦略が効果を発揮するまで、景気を支えるシナリオだった。
確かに、株高で資産を持つ富裕層を中心に消費が持ち直し、高級時計などが売れた。自動車など輸出産業を中心とする業績改善や公共事業が雇用を増やした。政府の賃上げ要請もあり、ベースアップやボーナス増も実現した。全体のパイが大きくなれば、資産を持つ人とそうでない人の格差が拡大しても、不安や不満は広がらないはずだった。
しかし、円安と増税を背景とする物価上昇のペースに賃上げが追いつかず、名目賃金から物価上昇を差し引いた実質賃金は9月に前年同月比3・0%減と15カ月連続で減少。中間層が打撃を受け、消費は低迷した。古賀伸明・連合会長は「賃金の安定的・継続的な引き上げを広げなければ」と話すが、中小企業は原材料価格の値上がりに苦しみ、賃上げの余裕はない。
円安は、企業が海外で稼いだ利益をかさ上げする。ただ、企業は円高の時に工場を海外に移したため、輸出数量は増えにくくなった。このため、期待していたほど国内生産が増えない。
消費増税延期で財政再建が遅れるとの見方が広がれば、金利の上昇圧力も強まる。今は日銀が大量に国債を買って金利を抑えているが、金融緩和をやめたとたんに跳ね上がりかねない。
功罪相半ばするアベノミクス。今は恩恵を受ける人が限られ、景気に力強さが欠けているが、賃上げなどで回復の裾野が広がるのか。格差拡大などの副作用を突く野党も、対案を出して有権者に選択肢を示せるかが問われる。【小倉祥徳】
最終更新:11月21日(金)0時6分
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