安倍首相は2014年11月18日、消費増税の先送りと衆議院の解散を発表すると同時に、緊急経済対策との取りまとめについて指示した。7~9月期のGDPが大幅に落ち込んだことを受けての措置。だがその内容はかなり場当たり的で、財政的な景気刺激策がもはや限界に来ていることを暗示している。
7~9月期のGDPは年率換算でマイナス1.6%と予想を超える下落となった。もっとも影響が大きかったのは在庫調整なので、来期以降の数値がどうなるのか現時点では予測が難しい。ただ、消費の低迷から企業が生産と在庫を抑制した可能性は高く、最終的には個人消費の弱さが数値に反映されていると考えるのが自然である。
緊急経済対策の規模は、補正予算で数千億円、総額で2兆円から3兆円といわれている。具体的には地方自治体による地域商品券の配布やガソリンや灯油の購入支援策、住宅エコポイントなどが検討されている。一方、いわゆる公共事業については災害復旧の緊急対策に限定する意向を示している。
これはGDPの結果を受け、脆弱な個人消費を刺激することを念頭に置いたものだからである。だが現実には、極端な人手不足から公共事業をこれ以上実施できないという切実な事情がある。
安倍政権は積極的に公共事業を実施してきており、これまでGDPが比較的堅調に推移してきたのは、大型の公共事業による効果が大きい。だが国内の労働人口が激減しており、これ以上、建設労働者を確保するのは難しい状況にある。このため予算がついても執行できない案件が増えてきており、公共事業を通じた景気対策は限界となりつつある。
そこで今回検討されたのが、商品券や燃料費補助といった直接的な支援である。しかし、同様の政策は1999年に地域振興券という形で実施されているが、ほとんど成果が上がらなかったという経緯がある。また民主党政権時代には、コンクリートから人へというスローガンのもと、子育て支援など、直接的な支援策を実施したが、こちらも効果はほとんどなかった。
そもそも、量的緩和策といった金融政策が注目されたのは、公共事業を中心とする財政政策が限界に達し、直接的な支援策も効果がなかったことがきっかけである。今回のGDP下落によって、民主党政権を彷彿とさせるような直接的支援策に傾いているのは皮肉というよりほかない。
少なくとも今期については、財政支出した分だけGDPのかさ上げが可能である。だが、この支出が来期以降の成長につながる可能性は極めて低い。来期以降は、いよいよ政策的な手詰まり感が顕著になってくるだろう。
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