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【京都青酸カリ殺人】
グリコ・森永事件は時効…毒薬物犯罪、立証に高い壁 首都圏連続不審死は長期裁判に
昨年12月、京都府向日市の民家で住民の無職、筧勇夫さん=当時(75)=が死亡し、遺体から青酸カリとみられる毒物が検出された事件で、妻の千佐子容疑者(67)が殺人容疑で京都府警に逮捕された。事件で犯行に使われたとされる青酸化合物は、毒物劇物取締法で製造から販売まで厳しく規制されており、一般には入手することが極めて困難だ。だが、厳正な管理にもかかわらず、過去にも青酸化合物を悪用した事件は起きている。また、毒物や薬物を用いた犯罪は、立証が難しくて捜査・公判が長期化する事例も少なくない。
日本薬科大学の三澤美和教授(薬理学)によると、青酸化合物を体内に取り込むと血中のヘモグロビンと結合。ヘモグロビンと結合するはずの酸素が行き場を失い、全身への酸素の供給ができなくなり、死に至る。致死量は推定150~300ミリグラムとされる。
毒性が極めて高いため、青酸カリなどを業務で使用する場合、都道府県知事らへの届け出が必要で、輸入、販売業者らも登録が求められる。一般の購入は厳しく制限され、販売業者に住所や氏名、押印した書面を提出しなければならない。購入に不審な点があれば、販売業者は警察に届け出ることが可能だ。
これだけ厳しい制約とは裏腹に、青酸化合物を悪用した事件はたびたび世間を震撼(しんかん)させる。
東京都では昭和52年、電話ボックスなどに置かれていた青酸ナトリウム入りのコーラを飲んだ男性2人が死亡。59~60年のグリコ・森永事件では、青酸化合物が混入された製品が店頭にばらまかれた。2事件はいずれも時効を迎えている。