e-gas精製工場を建設し、各地へ供給していくことが必要となるため、g-tronの普及はそう簡単なことではない。そこでAudiは現代のニーズを1台で完結するクルマも同時に開発している。それがプラグインハイブリッドモデルの「Audi A3 Sportback e-tron(以下、e-tron)」だ。
従来のガソリン車の走りの快楽を損なわず、環境負荷の軽減という課題を解決すること。現在の市場で強く求められるふたつの要件をめぐって、Audiが出した「現実解」である。
Audiは、このe-tronを生産するための工場を新設することはしなかった。従来のA3 Sportbackの生産ライン、つまり市販モデルのプラットフォームを利用してe-tronはつくられることになる。効率と未来を見据えた対応柔軟性を、その生産方式によって確保したといえる。
e-tronはガソリンエンジンだけ、モーターだけ、そしてハイブリッド走行の3種のドライヴィングモードでの走行を可能としている。ガソリンとモーターを同時に使うことで、0-100km/h加速を7.6秒でこなし、最高速度は222km/hにまで達する。モーターだけを利用するエレクトリックモードでもパワフルな加速を得ることができ、最高速130km/hの性能を発揮する。
平均燃費は、66.67km/l(1.5l/100km)という驚きの数値を得た。ドライヴァーがアクセルを緩めたときには、一時的にエンジンもモーターも作動しない状態となり、車速を落とす方向で作用するトルクを排除することで、燃費の向上につなげているという。これによってCO2排出量も35kg/kmという高水準を達成している。
車載バッテリーは、3.6kWの充電装置により、およそ2時間半でフル充電される。エレクトリックモードの最大走行距離は50km、ガソリンエンジンを併用することで940kmとなり、長距離も走行可能だ。
Audi A3 Sportbackは、e-tron/g-tronといった新しいラインを実現するうえでの格好の発射台となっている。その理由としてAudiは、A3がAudiにとって最新のモデルであるとともに、現在ボディスタイルの拡充を図っている局面にあり、そしてその潜在的顧客層の広さを挙げている。プロダクトライフサイクルのなかに未来の種を植える、Audiのスマートな戦略性に、A3は最も合致したモデルといえる。
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