2014/11/20|Category:ハチ
文献上では本州以南の分布になっているが、南西諸島以外でこのアリを見つけるのは、
雨上がりの秋の終わりの曇天日に、道脇ですごい蚊柱みたいなのが立ち上がっており、よく見たらコレの結婚飛行だった。こんな時期にやるのか。こんな日に限って、大してムシなんかいないと思ってカメラを持ってきていない。本当はコレの交尾を撮りたかったのだが叶わず、脱翅した女王を家まで連れて帰った。
ミツバアリは、カイガラムシの一種アリノタカラと絶対的共生関係を築いている。結婚飛行時、翅の生えた新女王は出身巣から必ず一匹のアリノタカラを口にくわえてから飛び立つ。まるで、先祖代々秘伝のぬか床を抱えて嫁ぎに行く花嫁のごとく。
交尾を終えて地上に降りた女王は、すみやかに敵の目を避けて地面の隙間などに潜り込む。そこでさらに地中を掘り進んで営巣し、コロニーを構築していくものと思われる。アリノタカラは単為生殖で、一匹だけでどんどん増える。
アリノタカラは他種のアリではだめで、絶対にミツバアリの世話を受けなければ死ぬ。ミツバアリも、餌源を100%アリノタカラの出す甘露に依存すると言われているため、アリノタカラを紛失することは新女王にとってそのまま死に直結する。
だから新女王は、外へ飛び出してから交尾を終えて地面の隙間に潜り込むまでの間、文字通り死んでもアリノタカラを放さない。アルコール標本にされても、アリノタカラをくわえたまま事切れる。