「0円で空き家をもらって東京脱出!」が非常にいい本だったのでご紹介。
貧乏漫画家、空き家をもらって東京脱出!
つるけんたろう、熊本出身、30歳。漫画家をめざして上京したものの、まったく芽が出ず、絵に描いたような東京貧乏ライフを送っていた。が、ひょんなことから広島県尾道の空き家を0円でゲット!地元の人と助け合い、自ら左官作業で家を直して住む、そんな地方移住ライフをつづったコミックエッセイ。
著者のつるさんは漫画家を目指し、大学を中退して貧乏マンガ家ライフを送っていたそうな。
まぁ、そうなると当然ながら「このままでいいのか…?」と、人生に迷うわけです。そんな折、友人から「尾道では家賃1〜2万の空き家がある」という話が飛び込んできます。
まずは尾道に夫婦で旅行。尾道空き家再生プロジェクトのTさんのから「家と土地がタダで手に入ることもある」という話を伺い、移住のイメージが少しだけ具体的になります。
色々な不安もあるけれど、お金のプレッシャーには勝てず、思い切って移住することにしちゃいます。この考え方、面白いですよね。お金がないから移住してしまおう!という発想。
さて、ひとまずは友人宅に夫婦で転がり込み、そこから空き家探し。それほど紆余曲折なく、土地と空き家を「譲渡」してもらえることになります。タダ!と聞いてびっくりしますが、尾道は現在の建築基準法では新築が建てられない地域があるそうで、無償で譲ってくれる人もいるみたいです。ここら辺は尾道特有の地の利がありそうですね。
空き家をゲットしたあとは、プロや仲間の手を借りながら、自分たちで改修。ワクワクする話ですが、ムカデが落ちてきたり、腰のヘルニアが爆発してしまったりと、なかなか読んでて厳しいものがあります…。
ほとんど丸裸で飛び込んだ著者夫婦ですが、尾道の方々に受け入れられて、卓球場を作ったり、ゲストハウスを作ったり、DIY能力が異常に向上したり、空き家をもらってなんのお店を作るかわからないけどお店を持つことになったり、ぐいぐいと変化が訪れます。筆致からも、ご本人たちがワクワクとしながら過ごしていることが伝わってきます。
「住む場所を変えてみるのも手段だ」という最後のメッセージは、強く共感します。結局、場所が重要なんですよね。まさに「物理現象」なんです。
いやしかし、なんせ家賃0円ですからね…。この本を読んで価値観が変わる人は多いはず。東京で消耗している人はご一読あれ。人生変わっちゃうかもしれませんよ。
地域活性化のヒントも詰まった一冊
著者の行動力とコンテンツ力が背景にあるのはもちろんですが、尾道で楽しく暮らすことができているのは、やはり「尾道空き家再生プロジェクト」の存在が大きいのかな、とも感じさせる一冊です。
一人でもいいので、地域にTさんのようなキーパーソンがいると、コミュニティが生まれて、続々と楽しい人が集まり、楽しい場所が増えていくんでしょうねぇ。地域活性化に取り組んでいる人は、この本を手に取り、つるさんのようなクリエイターを呼び寄せる方法を考えるといいと思います。
何がって、この本、ギャグマンガとしても一級品の面白さなんですよ。「うちの妻ってどうでしょう?」みたいな日常系のマンガが好きな人にはかなりツボです。こういうユーモアを操れる人が地域に入り込むインパクトというのは相当デカいですよ。実際、この本のおかげで尾道に旅行したくなりましたし。
東京にはまだまだ貧乏漫画家が眠っているわけで、ここを狙って空き家活用施策を練っていくというのも面白いんだろうなぁ…と、色々なことを考えさせてくれる良著でございます。移住したい方、地域活性化に関わる方は読んでおいて損なしです。