ことば

少し前、ある旅行会社のチラシに「さあ、休夏しよう!」とありました。
日本語って、面白いですねー、簡単に当て字が出来ちゃう。
また、夜露死苦(ヨロシクー!)、愛死天流(あいしてる)
真夜中天使(ミッドナイト・エンジェル)
これはヤンキーが落書きなどよく書く文句だそうです。
でも、これらを話し言葉にすると、ちっとも面白くない。
文字にしてあるから、愉快なのである。

こうした当て字が広く認められ、なかには辞書にも載るようなものまであります。
「珈琲」「麦酒」「浪漫」「亜米利加」(米国)「目出度」、秋桜(コスモス)…

所が、こうした当て字は今にはじまったことではありません。
日本最古の歌集「万葉集」では、「当て字」なくして歌は成り立ちませんでした。
「銀(しろがね)も金(くがね)も玉も何せむに
  勝(まさ)れる宝子に及かめやも」(山上憶良)
この歌の元はこの様に書かれています。
「銀母 金母玉母 奈尓世武尓 麻佐禮留多可良 古尓斯迦米夜母」
つまり、「銀、金、玉」以外の文字はすべて当て字(万葉仮名)なのです。

ちょっと乱暴な言い方かもしれませんが、
あのヤンキーと同じ発想で、文字を書いていたのです。

しかしながら、文字を知らなくとも、話し言葉だけで生活はできます。
小さい子は難しい言葉、漢字を知らなくとも、
親などまわりの人々の理解のもと、元気にがんばっています。
いな、文字を持たない民族も、日々の生活を謳歌しています。
そこで、今日は「話し言葉と文字の関係」について考えてみます。

話し言葉は、その声の届く範囲も限られ、
また、一過性ですぐ消えて無くなり、伝達が困難です。
しかも、次世代への伝承も覚束無くなります。
方や、紙や竹、木などに書かれた文字は記録として残り、
これらの不便を解消してくれます。

この利便性に気づいた日本人は積極的に漢字の習得に努めます。
しかしながら、漢字は所詮、外国語。
そのまま使うには不都合が多すぎます。
この不便さを解消しょうとして創り出されたのが
ひらがなとカタカナです。
これはまさに、歴史的大発明ですね。
これによって、真の日本独自の文化が発展し、
ひいては近代、英語など外国語も比較的簡単に受け入れられる素地が
用意されたのではないでしょうか。

さて、この当て字が一般化、普遍化すると、
この文字言葉が一人歩きをするのではないでしょうか?
こういう事です、明治維新の頃、蒸気機関車やガス灯など
珍しい品々や多くの書物などが海外から怒涛のごとく流入してきました。
これらの品々には新たに名前がつけられました。漢字、カナ等で。

また言葉もこれまで日本語は無かった概念の言葉が数多くありました。
例えば、「liberty」という言葉。維新の啓蒙家達は苦心したようです。
でも、そこは漢文の素養のある方ばかり、
「自在」「自由」等を訳語として当てられました。
やがて、マスコミ等の使用により、「自由」が定着しました。
(※一般的には福沢諭吉が考えだしたおされているようですが、
   異説もあるようです)

そして、人々はこの自由という言葉、概念をもとに、
社会を見るようになりました。
この言葉のために、自分の社会生命をかける人まで現れました。
言葉はかように強いものなのでしょう。
そして、ここにきて、「自由」という言葉を通して、
話し言葉と文字の緊密性がいかに高いかを確認されるでしょう。

では、全ての日本語はこのように話し言葉と文字が
一対一で結ばれているでしょうか?
そんなことはありません。
「山崎」これは何と読むでしょうか? 
  そう、「やまさき」「やまざき」等
では、「まさこ」という名前はどんな漢字を書くでしょうか? 
  雅子、政子、昌子…
日本では不安が残りますが、海外では「Masako」で通じるのです。

でもでも、家の表札、テストの答案用紙、免許証には、
「山崎政子」で大丈夫なのです。
日本人って、最終的に漢字・文字で書かれていれば、
どの様に読まれようと一安心するのかもしれません。
あるいは、漢字信仰、文字信仰(?)といったことがあるかもしれません。

もう一つ、こんな例もあります。
ある外国人が「ポン、ホン、ボン、ホン、ホン…」と唱えていたそうです。
つまり、「一本、二本、三本、四本、五本…」の「本」
の読み方を丸暗記しょうとしていたのです。
私はこんな覚え方をした記憶はありません。
日本語って、考えれば考えるほど面白い。

話し言葉と文字の関係について、長々述べて参りました。
日本人はこのあいまいな日本語を上手にあやつっております。
『日本古語ー漢字・漢語ー西洋語』という三重構造はよくいわれる事ですが、
実際には、方言、隠語、それに話し言葉と文字の関係等を入れますと
大変複雑な多重構造の日本語になると思います。
それを日本人は巧みに使い、日々の生活に活用しております。

『にっぽんや

スコッチ あり升(ます)
水 品切

自動車 投売
道 売切
ミサイル 高価買入
基地 御相談

オリンピック 近日入荷
フジヤマ 見切

 但(ただし) SYMBOL 非売品 』
(「これが私の優しさです 谷川俊太郎詩集」より)


<参考図書>
山口沖美「日本語の歴史」(岩波新書)
「万葉集」中西進(講談社文庫)
「これが私の優しさです 谷川俊太郎詩集」(集英社文庫)

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