ゴールドマン、理系新卒採用の"殺し文句"
ウォール街はシリコンバレーより高報酬
ある火曜日の夜、コロンビア大学の学生クラブで会合が開かれた。部屋を埋め尽くした学生を前に、ゴールドマン・サックスの現役社員が、コンピューターサイエンスの知識を活かせるのはシリコンバレーではなくウォール街だと熱弁を振るった。
銀行員たちは、分が悪いことはわかっていた。ウォール街は退屈で規制だらけの世界なのに対し、シリコンバレーに行けばビーチサンダルを履いておしゃれなオフィスで働くことができ、100万ドルのストックオプションを手にできる。そんなイメージを覆さなければならないのだ。
彼らは技術系の学生に向かって、ウォール街はやりがいのある多様な世界だと売り込んだ。とりわけ難しいテクノロジーの問題に取り組むことができ、もちろん高収入が待っている、と。
「みなさんが考えているほかの仕事では、1種類のデータやアプリケーションしか扱いません。でも私たちは、つねに世界を相手にして、何百もの市場で数多くの商品を扱い、何千何万というクライアントと仕事をするのです」と、ゴールドマン・サックスのマネジングディレクター、アフシーン・アフシャーは学生に語りかけた。
プログラマーが銀行の花形部門に
この夜の説明会は、金融機関にとってますます不可欠な人材になっているプログラマーの争奪戦で、ゴールドマン・サックスが出遅れているという焦りを反映していた。
「私たちが採用活動をしている多くの学校で、技術系の学生にとって第一志望ではなかった。エンジニアはIT企業で働こうと考える」と、ゴールドマン・サックスのマーティン・チャベス最高情報責任者(CIO)は言う。
ゴールドマン・サックスには、「ストラット」と呼ばれるハイレベルのプログラマー兼バンカーが現在1223人。2009年以降、43%増えている。テクノロジー部門は社内最大の規模となり、全従業員3万2000人のうち8000人を擁する。
しかし、金融業界でプログラマーの重要性が高まるにつれて、争奪戦も激しくなっている。昨年からテクノロジー部門を取り仕切るチャベスは、就職の世界で会社の評判を一新させようとしている。
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