Hatena::ブログ(Diary)

思いつきのメモ帳

2014-11-19

[][][]身売りの背景には家族制度があるという指摘

 戦前の廃娼運動について、1931年6月11日付けの読売新聞に河崎夏子氏*1の『婦人評論 廃娼運動と私の見方』と題したコラムが掲載されている。その文章の中に次のような一節がある。

【3】私共はこのような提言をする前に、も少し現実的な立場から公娼制度を廃棄したいのである。それは公娼制度に見られる人身売買の性質が、封建的だからである。自分の意志で自分の労働を売るのでなしに、家族制度の犠牲となっている場合が多いことを言いたいのである。親の苦労を救うために娘が……でなしに親が自分の娘を売り飛ばすというような場合がその一例である。

読売新聞1931年6月11日朝刊9面より引用。漢字と仮名遣いは現代風に改めた。強調部は筆者による。


 当時は東北の農村などで貧困を背景とした娘の身売りが横行したことは良く知られる。娘を売り飛ばした親たちとて大なり小なりの葛藤はあったろうが、当時の家族制度に内在する女子の人格軽視が身売りを正当化する論理として機能したのではないだろうか。そして当時の公娼制度は貧困の中で「家」の維持のために犠牲となったこのような娘たちに対する貸座敷業者の搾取を公認した制度だったといえるのだろう。

*1:恐らく河崎ナツ氏の筆名。今年の5月に読売新聞は連載『人生案内』が100年を迎えたことを機に、戦前の同連載の執筆者であった河崎ナツ氏に関する記事を掲載している。http://www.yomiuri.co.jp/komachi/kurashi/CO005562/20140504-OYT8T50030.html

スパム対策のためのダミーです。もし見えても何も入力しないでください
ゲスト


画像認証

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/yasugoro_2012/20141119/1416416848