端整な描線が魅力! 新4コマ誌『コミックキューン』の「かわいい」に触れてみよう
すいーとポテトです。自称、ススメWebの新しもの担当です。新しい作家、新しい雑誌、そして新しい動向を追いかけることが好きです。これから新しい4コママンガの世界を色々お伝えしていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
さて、今回は今年8月に登場した新しい4コマ誌『コミックキューン』を紹介します。「かわいい」というありふれたキーワードを据えつつも、雑誌の色が明確に出たこの「4コマ誌」が、私は今とても楽しみです。
『コミックキューン』とはどんな4コマ誌か?
『コミックキューン』はメディアファクトリーのマンガ雑誌『コミックアライブ』(毎月27日発売)の創刊100号記念として同誌の中に誕生した「4コマ誌」です。単独の冊子として存在するわけではなく、アライブの誌面の一部を使用して実現されています。そのため、正確に言えば雑誌内4コマ誌、または特別4コマ企画といったところでしょうか。「創刊号」はアライブ第100号でもある2014年10月号で、最新号は2014年12月号の「第3号」です。KADOKAWAのウェブコミックサイト『ComicWalker』では連載作品の第1話と最新話を無料で読むことができます。
キューンは他の4コマ誌と比べてコンパクトでありながらもあなどれない「4コマ誌」です。現在の連載陣は、おしおしお、三月、たらばがに、emily、カワハラ恋、TOもえ、ミヤコヒト、むく、甘党、はなこ(順不同、敬称略)と、アライブに縁のある作家だけでなく、他の4コマ誌で活躍し始めた作家や全くの新人作家も揃っています。ページ数こそ100ページ強と一般的な4コマ誌の半分程度ですが、こういったフレッシュな連載陣、そして後述する通り明確に見える雑誌の色によって、言わば「小粒でもピリリと辛い」印象を受けます。
端整な描線が魅力の作品が揃う
キューンはキャッチコピーの中に「かわいい」「キュート」という言葉がよく現れます。そのココロをひとことで表すなら 端整な描線 でしょう。いずれの連載作品もキャラ絵を見ただけで率直に「可愛い!」と思えるものばかりです。「かわいい」という言葉があふれる4コママンガの世界において、かくも明確に雑誌の色が見えることに、私はワクワクを隠せません。以下では連載作品をいくつか見ていきたいと思います。
箱入りお嬢様のドタバタ庶民生活 ― おしおしお『さくらマイマイ』
マイペースな主人公櫻子は生粋のお嬢様。もちろん高校も有名お嬢様学校へ通うことになっていたのだけど、手違いで一般高校に入学してしまい…? 世間知らずな箱入りお嬢様が庶民生活を学ぶ!? おんぼろ寮のドタバタコメディ!
箱入りお嬢様の櫻子が、しっかり者の瑠璃、元気っ子の純、そしてクールな夏目と一緒にオンボロ寮で繰り広げるドタバタ庶民生活4コマです。キャラ絵の柔らかな輪郭線、淡いトーン、そして潤んだ瞳に惹かれます。それでいてお話はコミカルさも忘れておりません。櫻子が世間ずれた言動を見せ、他の三人が不意をつかれる様が、喜怒哀楽の表情豊かで賑やかに楽しいです。
作者は芳文社『まんがタイムきらら』でも美大女子4コマ『神様とクインテット』の連載を始めています。これから注目の4コマ作家の一人と言えるでしょう。
人見知りさんとにゃんこたちの日々 ― たらばがに『にゃんこデイズ』
人見知りの友子が学校から帰ると、玄関で出迎えてくれるのはかわいいネコネコネコ(=^・ω・^=)(=^・ω・^=)(=^・ω・^=)[3匹]。放課後ねこモフ4コマ!
人見知りで友達がいない友子(ゆうこ)が三匹の猫耳っ仔「まー」「ろー」「しー」に癒されるにゃんこ4コマです。友子のデレデレな表情と三匹のくりくりと丸い瞳に、読んでいるこちらまで癒されてしまいます。そしてお話の方もほっこり良心的です。猫つながりで、友子は同じクラスの人気者・白鳥さんと友達になることができます。そんな友子の笑顔を見たまーの「よかったねー」の言葉に、この三匹がいてくれたからこそこの日々が得られたのだ、と感じられて心温まります。
作者は今作が初の商業連載作品とのことです。このハートウォーミングな作風はきっと今後も強い武器になる。そう思わずにはいられません。
暴走女子とインドア吸血鬼さんの同居 ― 甘党『となりの吸血鬼さん』
天野灯はひょんな事からソフィー・トワイライトという吸血鬼の女の子に助けられ、一目でソフィーを気に入ってしまう。 イマドキ吸血鬼さんとの同居コメディ!
人形大好きな女の子・灯(あかり)と人形のような容姿の吸血鬼・ソフィーのひとつ屋根の下4コマです。まさに端麗という言葉が似合う二人の姿には感嘆のため息が漏れることでしょう。そうしてウットリとしていると、今度は二人のキャラにしてやられます。おっとりした見た目によらずソフィーに対して暴走気味に積極的な灯と、吸血鬼なのに怖いもの嫌いでインドア文明的なソフィー、というギャップが面白可笑しいです。
本作は元々アライブに読み切り掲載されていましたが、この度キューンで連載化されました。生え抜き作品がこうして日の目を見ることは、新参読者の私でさえ嬉しいのですから、古くからの読者はひとしおでしょう。新しい作家を育てるんだ、という編集部の気概も感じます。
KADOKAWAの「4コマ力(ぢから)」はいかほどか
今回紹介した作品以外にも、キューンには魅力的な作品が揃っています。気になる皆さんは試し読みページでお気に入りの作品を見つけてみてくださいね。
さてさて、こうした作品が揃うキューンは、今後どのような「4コマ誌」になっていくのでしょうか――。このことを考える上で、私はKADOKAWAという出版社の動向は切っても切り離せない、と考えています。皆さんもご存知かとは思いますが、KADOKAWAにはアライブやキューンを擁するメディアファクトリーだけでなく、角川書店、アスキー・メディアワークス、エンターブレイン、富士見書房など、傘下に多くのグループ企業が存在します。これらの企業が持っている4コマコンテンツや4コマ編集力など、言わば「4コマ力(ぢから)」の粋を集めたら、ひょっとしたら今までに見たこともないような4コマ誌が誕生するのではないか――。人によっては「それは過剰な期待だ」と思われるかもしれませんが、それでも私はキューンの先にある新しい未来に思いを馳せずにはいられません。
端整な描線が魅力の作品が揃った新しい「4コマ誌」。皆さんもぜひ『コミックキューン』の「かわいい」に触れてみてください。