ブライアン・メイさん「日本は特別な場所」11月13日 21時38分
ロックバンド「クイーン」のギタリスト、ブライアン・メイさんはNHKのインタビューに、亡くなって23年になるフレディさんや、日本のファンヘの思いを語りました。
12日におはよう日本で放送した、インタビュー後編を掲載します。
Q:クイーンというバンドについてうかがいます。
デビューから40年以上が過ぎましたしフレディがこの世を去ってからも20年以上が経ちました。
クイーンは今も多くの人に愛され、リスペクトされています。
これはなぜだと思われますか?
A:(笑)なぜだろうね?僕にもわからないよ。
この間も日本に行って、大阪とかでコンサートをやったけれどね。
今回も最高だった。
日本の人たちとはすばらしい絆があるんだよ。
でも確かに、世界中で今でもみんながクイーンの音楽を聞いてくれていて、これは本当に恵まれていると思うよ。
でもなぜなんだろうね?その理由は僕にもわからないよ。
たぶん僕たちが普通の人のことばで話しているからじゃないのかな。
僕たちはロックスターのような物言いはしないからね。
そして誰もが持つ夢や希望、失望や痛み、悲しみを歌っているところかな。
それともう1つ、メンバーにこの4人が揃っていて、曲作りでもいつも競い合っていたというのもあるね。
絵筆を持つ画家が4人いて、しかも全員が絶対に自分の意見を曲げない、というような。
だからハイレベルの競争と、自己批判があったんだよ。
そのおかげで、曲のレベルを上げられたんだと思うね。
でも結局のところ、なぜなのかは僕にもわからないね。
みんなに曲が聞きたい、もっとライブをやって欲しいと言われることは、うれしく思うけど。
クイーンの曲は、普通の人々の気持ちを見事に表現している。
それは確かにすばらしいよ。
でもなぜここまで受けるのかは、僕にも本当にわからないんだ(笑)。
Q:日本にはクイーンのファンが多くいます。
ほかの国のファンとの違いはありますか?
A:そうだね!最初に来たときから、日本はとても特別な場所だったよ。
ある意味、世界のどの国よりも早く、僕たちがロックスターになったのが日本だったからね。
最初に東京に着いた時、武道館でライブをやるのに来日したときは、ビートルズのアメリカ上陸かと思うような大騒ぎだったよ。
あんな騒ぎは見たことがなかったね。
日本以外の国では、当時はそれほどビッグスターではなかったから。
だから日本とはずっと、特別な関係なんだ。
長い時を経て関係も変わってきたけどね。
最初は「アイドル」的な扱いだったのが、今ではミュージシャンとして受け止められていると思う。
それでも日本の人たちは今でも、僕たちに対して胸をときめかせたり、特別な絆を感じたりしてくれていて、どうしてこうなったのかは、本当に誰にもわからないんだろうね。
そういうものだというだけで。
だからイギリスやアメリカで日本人の女性に出会ったりすると僕自身も特別な絆を感じるんだ。
1975年のあの盛り上がりをともに体験したんだな、と思うとね。
Q:なるほど。
メイさんは何度も来日されていて、ことしの8月にもいらしていますね。
日本のここが好きというところはありますか?
A:もちろん、僕たちはみんな日本が好きだよ。
僕が特に好きなのは日本庭園だね。
京都とかの。
僕は伝統的な要素が好きで、桜の花や美しく作られた庭園がすごく気に入っている。
心が安らぐ感じが好きだね。
だから日本庭園で座っていると、そうした雰囲気を感じて、心が落ち着くよ。
すべての生き物を特別と考え、敬意を払っているからね。
僕もそういう考え方をしているんだ。
何年も前に「手をとりあって」という曲を書いたんだ。
当時僕たちの通訳をしてくれていたすばらしい女性が日本語歌詞を書いてくれた。
僕が感じた日本の印象を曲にしたんだよ。
今も気持ちは変わらない。
相通じるものを感じるし、それはこれからもずっと変わらないはずだよ。
あの曲が歌っているのはそういうことなんだ。
お互いのことを意識し、ずっとつながっていよう、という意味だね。
Q:4人のメンバー全員が才能に恵まれ、競い合っていたとおっしゃいましたが、皆さんはどのようにクイーンの音楽を作り上げていたのでしょうか。
A:いや、実際は戦いだよ。
戦いになることもあった。
駆け引きとか、口論とか、とにかく熱いプロセスだったね。
いつも和気あいあいというわけにはいかなかったね。
うまくいくこともあったけれど。
たいていは、誰か1人が自分のアイデアを持ってきて、みんなの前に差し出す。
すると全員でああでもないこうでもないと意見を言いまくるんだ。
「俺は気に入った」「気に入らない」、「やるべきだ」「やめよう」とかってね。
そしていろいろなやり方を試してみる。
そういうやり方だった。
何か起きるかもしれない。
何も起きないかもしれない。
ときにはどうもしっくり行かずに終わってしまう。
でもたいていは何か反応があって、ある人が持ってきた最初のアイデアに、他のメンバーがいろいろなアイデアを付け足して、どんどん姿が変わっていくんだ。
で最終決定をする。
最終的にこの曲をどうするかと言うことを決めるんだ。
たいてい、クイーンのしきたりでは、最初にアイデアを持ってきたメンバーが、他のメンバーの意見を採用するかどうかを決めることになっていた。
でもこれは、本当につらいやり方だよ。
わが子も同然のアイデアを持ってきて、それが引き裂かれるのを目の当たりにするわけだからね。
そして、最終的にどんな姿になるかは全然わからない、という。
でもたいていは、最初のアイデアより良くなっているんだよ。
それこそがクイーンの作曲プロセスだからね。
メンバーはお互いに対してとても厳しかったよ。
クイーンはずいぶん外部からの批判にさらされたバンドでね。
今はもう、誰も覚えていないかもしれないけど、音楽誌やメディアから、当時はさんざんに言われたものだよ。
でも特に苦にならなかったのは、すでにバンド内で厳しい批判にあっていたからだね。
すでにそういう厳しいプロセスをくぐり抜けていたんだ。
Q:メイさんオリジナルのハンドメイドギター、「レッド・スペシャル」についても話していただけますか?
A:そう、ちょうどこのギターについて本を出版したばかりだけれど、この本には僕もとても満足しているんだ。
ある意味、無理やり出版させられたんだけどね。
僕が「忙しくて無理だよ」って言っていたら、スタッフが「ダメです、この本は絶対に出さないと!」と言ってきたんだから。
というわけで、スタッフに書いてもらったんだ。
僕が父と一緒にギターを作り始めたところから、今に至る歴史が全部詰まっている。
そもそもこのギターは、僕が自宅で弾くために作ったものなので、これを手に世界を回って、一生を共にするとは思いもしなかったよ。
でも僕にとってはすばらしい楽器だよ。
とても個性的で、もはや僕自身の一部分のように感じるね。
ほかのギターも弾けるけれど、このギターを弾くのとはまるで別物なんだ。
Q:メイさんのギターと、フレディの声のコンビネーションはクイーンの音楽の重要な要素だったと思います。
それこそがクイーンをクイーンたらしめていたんですよね。
A:そうかもしれないね。
クイーンの音楽は、4人がいて成り立つものだけど、そこが大きな要素だったのも間違いないね。
それに、フレディはすごく支えてくれて、コンビを組むには最高のボーカリストだった。
ギターにも″声″があるのを理解していたからね。
それに、だから彼の声と僕のギターの間には、常に相通じるものがあった。
もうすっかり昔の話だけど、「伝説のチャンピオン」をミックスした時のことは今も覚えているよ。
曲の最後のほうに、僕はフレディのボーカルと対立するようなギターのフレーズを入れたんだ。
その演奏をミックスしている時に、フレディにこう言ったんだよ。
当時はミックスも全部手動だから、フェーダーに手を添えて音量を上げ下げしていてね。
それで僕がフレディに、「気をつけろ、ボーカルが消えちゃうぞ」って言ったら、フレディは「いや、ギターがボーカルときっこうする感じにしたいんだ。お互いが戦って、テンションが高まる感じがいいと思う」って言うんだよ。
それで結局、フレディがギターの音量を上げ、僕がボーカルの音量を上げることになった。
最終的に、特別な曲になったわけだよ。
曲のいちばん目立つところで起きる、ギターとボーカルのせめぎあいに、フレディはとても意識的だったね。
Q:ニュー・アルバムと未発表の3曲の話に戻りますが、これらの曲について、日本のファンに特別に伝えたいメッセージはありますか?
A:ある意味では、この未発表曲はクイーンの若々しい姿を再び見せてくれるものだね。
当時の姿が分かる。
そしてこれはいつものように、日本でも楽しんでもらえると思うよ。
この間日本に行ったときも、最高だったよ。
クイーンとして初めて、「ボーン・トゥ・ラヴ・ユー」を演奏して、アダム・ランバートに歌ってもらった。
実に立派に歌いこなしていたと思うよ。
あれはライブの中でも特別な見せ場だった。
ツイッターで「ボーン・トゥ・ラヴ・ユー」について書いている人も多かったし、僕たちもたくさん感想をもらったんだ。
アダムが見事にあの曲をよみがえらせてくれた。
若々しく一新されたよ。
若さがよみがえったあの瞬間は、最高だったね。
アダムはツアーで「ラヴ・キルズ」も歌ってくれた。
たぶん日本でも歌ったはずだけど、僕も良く覚えていないな。
でも美しい声を聞かせてくれたよ。
そしてアダムのすばらしいところは、フレディのまねをする必要がないという点だね。
彼は彼らしくあればそれでいいんだよ。
でもフレディが持っていたテクニックや、ステージでの見せ方といったものを、アダムも持ち合わせていると思うよ。
そうした精神があるから、アダムとのステージはとてもうまくいった。
日本のお客さんも、アダムには大受けだったね。
Q:日本のファンにメッセージをいただけますか?
A:日本のファンに、だね!そうだね……新しいアルバムを楽しく、刺激的な作品と思ってくれたらうれしいね。
昔からのファンなら、共感できるところをたくさん見つけられると思う。
新しいファンの皆さんも、何か今までにない新しいものを見つけられるはずだ。
クイーンの歴史の中から何かが見つかるはずだよ。
僕たちは今、人生の秋と言える時期にあるけれど、このアルバムには僕たちがここに至るまでの道のりすべてを象徴する曲が入っている。
楽しんでもらえたらうれしいね。
またすぐに日本でお会いできるのを楽しみにしています。