来年1月のアジア杯を前にした、年内最後の親善試合。4万6312人で埋まった長居スタジアムのスタンドは代表戦特有のお祭りムードに包まれていたが、ピッチ上には火花を散らす22人がいた。
ハビエル・アギーレ監督は、4日前のホンジュラス戦のメンバーから右ひざ痛の内田篤人を除いた10人を2戦連続で先発に指名していた。
相手はアジア杯のホスト国であり、韓国と並ぶライバル国の一角、オーストラリア。アジア杯前哨戦と位置づけ、「勝つことが目的だ」と発破をかけて送り込んだのは本田圭佑、香川真司、岡崎慎司に長谷部誠や遠藤保仁を含む“ベストメンバー”だった。
状況把握に優れる彼らが、オーストラリアの異変を察知したのは、試合が始まってからほどない時間帯だった。
4-3-3の最終ラインから守備のオーガナイズをしていた吉田麻也は、前線からのプレスがハマっていないのに、中盤がボールを奪いに行ってはかわされ、アンカーの両脇のスペースを使われるシーンが繰り返されることに危機感を抱いた。
「相手の両サイドの選手が中に絞ってきて、ハセさんの左右のスペースでボールを受け、そこで起点を作られていた」
ロングボール脱却を目指すオーストラリア。
オーストラリアが日本に対して使ってくる戦法と言えば、今までならロングボールがセオリーだった。空中戦は日本が最も苦手としていることだからだ。しかし、今回は違っていた。
長谷部が言う。
「向こうはホンジュラス戦をかなり研究してきた。自分がDFラインに下がったところにマンツーマンで来て、つなげなかった」
吉田も、「ロングボールを全然蹴ってこなかったし、中盤にもボールを扱える選手が多く、後ろもビルドアップにトライしようとしていた」と敵の変化を感じ取っていた。
思えばオーストラリアも、W杯では惨敗している。選手が若返り、ロングボールを蹴るだけではない新しいスタイルに取り組んでいる。考えてみれば変化があるのは自然なことだ。
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