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「大義がなく、事情だけの選挙」だとしても投票には行こう

今回の総選挙は、逆桶狭間だといわれています。兵力で劣った側が奇襲攻撃をかけたのではなく、圧倒的な議席数、つまり兵力をもった側が解散総選挙の奇襲をかけたのです。大義を求める声もありますが、安倍内閣の長期安定化を目指した選挙なので、それは無理があります。ある意味では面白い選挙です。大義はないけれど、政権の事情がよくわかる選挙であることと、与党も野党も争点を示せそうになく、投票を決める争点が有権者側に投げかけられている選挙だからです。与えられた政策の焦点ではなく、有権者自らが焦点を自由に決め、それぞれの考え方で投票する選挙だということです。それは政治が有権者主導への第一歩となる可能性を秘めているように感じます。

最悪は「棄権」です。「棄権」は、安倍内閣、与党への白紙委任状を出すに等しいことはいうまでもありません。驚く内容のブログがありました。政権に批判的な元外交官の天木直人さんが「安倍解散・総選挙に対する最強の反撃は選挙のボイコットだ」と書いておられます。どう考えてそうなるのでしょうか。見事はめられていらっしゃいます。
安倍解散・総選挙に対する最強の反撃は選挙のボイコットだ | 天木直人のブログ

選挙の投票率が一定比率を割れば選挙が無効になるとか、投票率で政権の評価が左右されるというのなら別ですが、実際はそうではありません。投票率の高い、低いにかかわらず、獲得した議席数で決まる世界です。選挙に「勝てば官軍」です。

しかも投票率が低ければ低いほど、組織票を抱えた与党に有利になってきます。棄権するのは多くは浮動層の人たちです。だから、棄権する人が多ければ多いほど、「反撃」どころか、組織票、既得権益を握っている人たちの意志が色濃く反映されるので、笑うのは与党であり、安倍内閣です。

今はとくに支持政党がない、是々非々で投票先を決める浮動票が圧倒的で、浮動票がどこに流れるのかで結果が大きく左右される時代です。選挙の鍵を握っている浮動層の人たちが「棄権」すればするほど、自民党や公明党には有利になってきます。

さて、「大義」がないといわれる今回の解散総選挙ですが、痛いほどわかる「事情」はあります。

まずはアベノミクスの不発、または失敗です。いくら安倍首相が力説しても、安倍内閣発足から、円安や株価高にはなりましたが、経済成長率は低水準なままに推移しています。
しかも、民主党の政策やアベノミクスというよりは、リーマンショックから立ち直り、また震災の痛手があったとしても、低水準であれ成長力を自律的に取り戻していた経済が、ついに4月以降は、2期連続でマイナス成長となってしまいました。

■経済成長率の四半期推移(実質)
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日本の経済成長率の四半期推移 - 日本経済のネタ帳

このままではてきて、不満が高まる前に、解散総選挙を行ない、政権基盤がためを行いたいというのはよくわかります。

日本の産業構造の転換を推し進める成長戦略もこれといった施策が与野党ともに示せません。雇用の柔軟化をはかり、労働力の流動性を高めることが産業構造の転換を促す鍵になりますが、与野党ともにそのパンドラの箱に手をつける覚悟もないままです。

それに加えるとすれば、事実かどうかは定かでないにしても、週刊誌が取り上げ、野田前総理が暗に示唆しているとおりに、閣僚のなかに政治資金問題を抱える火種があるとすれば、政権はもちません。解散総選挙を行えば、内閣改造の失敗もご破算にできそうです。
11月下旬には、直近の政治資金収支報告書が公表されます。そこには、安倍政権にとって致命的なダメージにつながる報告が含まれているのかもしれません。解散すれば、国会の追及はなくなります。総選挙に入れば選挙妨害になりますので、メディアも特定の政治家の疑惑報道は控えます。選挙後に内閣をリセットすれば、疑惑隠しは成功するのです。
解散!?

実際には、安倍内閣を評価する焦点はいろいろあります。経済ばかりでなく、外交、原発、憲法解釈の変更、特定秘密保護法案、武器輸出の見直しなど、立場、考え方によって大きく別れるものが並んでいます。

野党の民主党もにわかの政権批判はできたとしても、政策の焦点をつくることすらできていないので、どの程度安倍内閣に信任を与えるか、あるいはお灸をすえるかの選挙になってくると思います。まるで株主総会みたいな選挙ではないでしょうか。

国民が自ら考え、自らの視点で投票することが、政治を鍛えるにはもっとも大切だと思うので、ノイズに惑わされずに、ぜひ投票に行きましょう。

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