■ヨガきっかけ
「インド料理店が増える背景には両国の経済緊密化があったのか」。章司が調査ノートをまとめていると、明日香が再び助言を与えてくれた。「お店を通じて、現地の様々な文化が日本に浸透してきたわ。それがまたレストランに客を呼んでいるそうよ」
章司はインド舞踊のカタックダンスを教える東京都千代田区の教室を訪ねた。地下のスタジオに入るとエキゾチックな音楽にあわせ、10人程度の女性が手足を複雑にくねらせていた。北川真亜子さん(22)はインド料理好きが高じて今年春に通い始めた。「レストランで踊るのが夢なんです」
一緒にレッスンを受けていた江頭葉月さん(38)は6年ほど前、同国生まれのヨガを習い始めた。今では講師も務めるほどだ。
ヨガ用品メーカー、ヨガワークス(東京都中央区)は日本のヨガ人口を少なくとも約100万人と推計。ヨガ講師に関連の哲学を教えるヨーガ学研究所代表、小谷能久さん(54)は「いまは健康づくりとしてのヨガブーム。ヨガを始めてからインド料理店に通う人も目立つようです」と話す。
現地の人気スポーツ、クリケットの愛好者も増えている。日本クリケット協会によると競技人口は最近5年間で1.5倍。千葉県のあたりで伸びが目立つ。
首都圏で働くインド人の技術者や料理人は、通勤に便利で家賃が比較的安い東京都東部や千葉県西部に集まって住む傾向がある。週末には仲間が集まり公園などでクリケットを楽しむ姿も見られる。同協会の事務局長、宮地直樹さん(33)は「こうしたプレーを見かけて日本人が刺激されることがあってもおかしくないでしょう」と推測する。
■家庭でも調理
在日オーストラリア人が主体のチームでプレーしていた千葉県の森本隆之さん(33)は来年、インド人のIT技術者でつくるチームに移籍する。「クリケットを話題にレストランで友人が増えました。レベルの高いチームでもまれてうまくなりたいと思います」
東日本大震災後、食卓を家族で囲む風潮が強まると、家庭の外で覚えた味をレパートリーに加える例も出てきた。エスビー食品によると、南アジア風味を出すスパイス「ガラムマサラ」の家庭向け出荷額は10年度が06年度より4割伸びた。都内のレストランでの料理教室に参加した植竹佳世子さん(45)は普段から精力的に食べ歩く。「インド料理作りを極めたいですね」
章司は事務所で報告した。「ネパールやパキスタンからもシェフの来日が相次いでいますが、店は日本でよく知られている『インド料理』を名乗る例が少なくありません」
依頼人が帰ると所長が伝票を突きつけた。「また勤務時間の記入を間違えているぞ。パソコンで管理するんだ」。章司は困った顔。「ITは苦手です。インド企業に給与計算システムを作ってもらいましょうよ」
インド料理
「若者の失業率は中高年層に比べると高いそうだね」。事務所に立ち寄った神田のご隠居、古石鉄之介の話に、探偵、深津明日香が反応した。「新卒採用に積極的な企業が増えているのに、なぜかしら」。早速、調査を始…続き (11/19)
「来年10月に再び消費税の増税が予定されているそうですが、景気にはどう影響するのでしょうか」。近所の主婦の疑問に、探偵の松田章司が「重要な問題ですね。調べてみましょう」と調査に乗り出した。
章司はま…続き (11/12)
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