東日本大震災で被災し、沿岸部の運休が続くJR山田線(岩手県)の復旧計画が足踏みしている。JR東日本は1月、第三セクター・三陸鉄道へ運行を移管する条件で施設を元に戻すと表明したが、赤字を懸念する沿線自治体との協議は長期化。その間も人口減少は続き、再生の展望が描きにくくなっている。
同線の運休区間は、津波で線路や橋が流失した宮古―釜石間の55.4キロ。JRは当初、バス高速輸送システム(BRT)での仮復旧を提案したが、沿線市町は拒否。打開策としてJRが示したのが三セク化だった。
2月には復旧費の約7割、140億円の負担や人材支援、10年分の赤字補填として5億円の援助を提示した。三陸鉄道はNHK連続テレビ小説「あまちゃん」の舞台として人気が上昇。その南北に分かれた2路線を山田線がつなぐ形になっており、一体化で「円滑な接続やコスト削減も見込める」とJRは強調する。
しかし、地元では「支援額の根拠が不透明」との声が収まらず、8月の沿線首長会議では移管の是非を棚上げし、条件整備を続けることにした。
運休区間は震災直前の乗客数がJR発足時の4割、1日約700人に落ち込んでいた。地元の試算では、仮にJRが復旧させても最大480人ほどにしかならない。
大槌町の浪板海岸駅はホーム脇の橋が流失したまま。「以前は店で列車を待つお客さんもいたけど、今は車。復旧しても変わらない」。駅前で菓子店を営んできた女性(50)は諦め顔で話し10月、店を高台へ移した。
被災した駅周辺は多くが地盤工事中で、地元住民は離れた仮設住宅などに暮らす。自治体は「鉄道の復旧が決まらなければ、住民も戻って来られない」と気をもむが、沿線の大槌町は推計人口が震災直前から2割以上も減り、あるJR関係者は「復旧しても乗客数の維持すら難しい」と話す。
安部誠治関西大教授(公益事業論)は「鉄道はまちづくりの核になる」と復旧の意義を語り「被災した公共施設を駅周辺に再建するなど、まずは自治体が鉄道を中心とした将来の展望を示すべきだ」と指摘する。〔共同〕
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