エボラ熱:備え急げ 医療機関で広がる訓練・研修
毎日新聞 2014年11月14日 12時00分(最終更新 11月14日 13時04分)
ウイルス侵入阻止の水際対策が続くエボラ出血熱について、全国の医療機関が「いつ患者が受診に来るか分からない」と危機感を強めている。本来、エボラ熱患者は全国46カ所の感染症指定医療機関で対応することになっているが、東京都町田市では今月、西アフリカからの帰国者が発熱して近所の診療所を受診するケースがあった。国内発生に備えた実地訓練を急ぐ動きは、指定医療機関以外にも広がっている。
感染症医療の拠点となっている国立国際医療研究センターは、10月から全国を回ってエボラ熱対応の訓練指導をしているが、支援要請や問い合わせが後を絶たない。そこで、ホームページで防護服の着脱方法などを解説する動画を公開するとともに、研修会を開いて各地で指導できる人材を増やすことにした。
13日に東京都新宿区で開いた緊急の研修会には、全国の指定医療機関から約40人が参加した。専門医らがエボラ熱患者の受け入れや診療の注意点を説明し、実際に防護具を着脱する練習をした。同センターの堀成美看護師は「感染症対策のお手本としていた米国でも看護師の2次感染が起きた。普段の業務でエボラ熱などに対応した防護具を身につける機会はなく、訓練を積んでいないと事故が起こる危険がある」と指摘する。
この日の研修には、国際空港のない地域の病院関係者の姿も少なくなかった。奈良県立医大病院の松浦一看護師は「これまでは仮想の話だったが、関西でも疑い例があり現実味を帯びてきた。院内マニュアルや防護具の着脱方法の見直しを進めたい」。佐賀県医療センター好生館の福岡麻美医師は「エボラ熱発生に備えて院内チームを設置したが、万全ではない。それ以外のスタッフも巻き込んで態勢を整えなければ」と語った。
東京都看護協会も今月から、指定医療機関以外の病院勤務も含む看護師を対象に研修を始めた。都内に約180人いる「感染管理認定看護師」の7割以上が参加の見込みで、初回の9日は「手袋をテープで止めるべきか」「ゴーグルはいつ着けるのが最も安全か」といった実践的な質問が相次いだ。今回受講した看護師が講師になり、各病院や協会支部単位でも研修を開いていくという。【藤野基文、清水健二】
◇防護服着脱は練習必要
防護具の着脱練習に記者も参加してみた。