エボラ熱対策:「抜け穴」浮き彫りに 診察医師と一問一答

毎日新聞 2014年11月12日 19時27分(最終更新 11月12日 22時56分)

リベリアから帰国後発熱した男性を乗せて、国立国際医療研究センターに向かう救急車=東京都新宿区で2014年11月7日午後8時20分、徳野仁子撮影
リベリアから帰国後発熱した男性を乗せて、国立国際医療研究センターに向かう救急車=東京都新宿区で2014年11月7日午後8時20分、徳野仁子撮影

 −−仮にその時に渡航歴を知らされたら、疑似患者としての対応をしなければいけないとの認識はありましたか。

 その時はまず所轄の保健所に電話をし、指示を待つことになっています。当然、患者は家に帰してはいけないし、院内に留め置くことになる。「水際対策を強化していて、一般医療機関の受診は差し控えるよう注意喚起している」と報じられていたので、そこをかいくぐって(疑似患者が)来ることはまずないだろうと思っていた。これは私の先入観です。それが現実問題として起こったというのはびっくりなんです。厚労省もフローチャートの中で「万が一」という表現で一般医療機関を疑似患者が受診した場合の注意を記していますし、検疫関係者も「一般医療機関受診は想定外だ」と言っていました。

 −−この事例を教訓に厚労省は11日、流行国に滞在歴のある人へ一般医療機関を絶対に受診しないように求め、家族の連絡先も申告させるという強化策を決めました。

 今回、疑似患者となった男性と当局が一時的に連絡が取れないという事態が起きました。陰性だからよかったものの、もし陽性の場合はなんとしても連絡をつけなくてはならない。家族の連絡先が必要になるのもやむなしかなと思います。行政や医療は、患者本人だけでなく、その人と生活を共にする家族も守らなければいけない。公衆衛生上の倫理の問題が出てきます。「入ってきました、感染しました、2次感染が起きました」では遅いので。

 −−今回関わった医師として、提言したいことはありますか?

 私が何か口にするのは時期尚早でしょう。

 −−一般の方に向けては?

 一番大事なことは、パニックを起こさないこと。あらぬ臆測をばらまいて、パニック的行動をとらないということだと思います。

今回の経緯(※厚生労働省、診察した医師らの情報をもとに作成)

9月末〜10月26日 60代男性がリベリアに滞在

11月4日    男性が羽田空港から入国

6日夜      男性が発熱

7日

午前10時ごろ  東京都町田市内の医療機関を受診、「へんとう炎」と診断され帰宅

  11時ごろ  男性がリベリア滞在歴と受診の事実を検疫所にメールで連絡

  11時半ごろ 検疫所から医療機関に照会の電話、医師が事実を知る

  午後     医療機関は休診を決定、院内を消毒

         保健所が男性を「入院措置」とし、自宅を訪問

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