お金」の背後にあるものって?—山形浩生による序文

「お金」っていったいなんだろう。毎日世界中で、当たり前のように使われているけれど、「お金」が無かったら社会はどうなるんだろう。そんな「お金」にまつわる疑問について、評論家・山形浩生さんと岡田斗司夫さんが対話した新刊『「お金」って、何だろう?』(山形浩生 、岡田斗司夫 FREEex 著)の内容をcakesでも抜粋掲載。まずは、山形浩生さんによる序文をご覧ください。

経済学は「お金」が苦手?

 このたび、岡田斗司夫さんからお金の話をしろというお題をもらって、ぼくはいささかたじろいだのだった。というのも、お金というのはえらくめんどくさい代物だからだ。

 今回ぼくにこんな話がまわってきたのは、多少なりとも経済学っぽい話をあちこちでしているせいだ。ぼくは経済学者じゃない。でも確かに経済学関連の本をたくさん訳している。ある程度は経済学をかじってはいるし、仕事(本業の開発援助)でも経済学の理論は使う。

 でも……実は経済学というのは、あまりお金の話が得意じゃないのだ。

 さて、こう言うと不思議に思う人もいるはず。経済学というのはまさにお金の話だと、多くの人が思っているからだ。経済学はお金しか見ない、人間の心がない、なんでもお金にしてしまう、もっと血の通った暖かい経済学を—こんな話はしょっちゅう聴かされる。

 が、実はちがう。経済学は、実はお金をきちんと考えるのが苦手なのだ。

 それが証拠に、まず日本の経済学者どもは、「お金」ってちゃんと言えないんだよ。マネーと言ってみたり、貨幣と言ってみたり、通貨と言ってみたりする。これすべて、たいがいは「お金」と言うのとまったく同じ意味だ。でもこの人たちは、お金というのが何だか素人くさくて幼稚だと思っているらしく、何か別の言い方をするとそれが立派になると思っているらしい。あるいは昔中国で、お金は卑しいものだから、それを指すのに「阿堵物(アトブツ)」と呼んだ人がいた。たぶんそれと同じ心理が働いているのかもしれない。同じことだけれど、自分たちがお金というものを扱いきれていないのが後ろめたくて、別の表現を無意識に探しているのかもしれない。  

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consaba 経済学は「お金」が苦手?――山形浩生による序文|『「お金」って何だろう?』(光文社新書)|岡田斗司夫 @ToshioOkada /山形浩生 @hiyori13 |cakes(ケイクス) https://t.co/pdQi7QnKtQ 約1時間前 replyretweetfavorite

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