(英エコノミスト誌 2014年11月15日号)
中央銀行家は誰でも信頼の重要性を知っている。不換通貨――さらなる紙幣によってしか裏付けされていない紙幣――の世界では、買い物客や企業が現金を保有するには、現金の価値が保たれることを確信できなければならない。
その信頼が、ロシアで試されている。ロシアでは、過去3カ月間でルーブルがドルに対して23%下落した。
このような通貨急落は必然的に、輸入価格の上昇という形でインフレをもたらす。ロシアの消費者物価がすでに年間8%を超すペースで上昇していることを考えると、インフレ高進は心配の種だ。
だが、この数週間、それよりもっと怖いものの兆候が見え始めている。ロシアの銀行は切実なドル需要に直面し、ドルを少しでも取り込めるよう、ドル預金に対して支払う利息を引き上げた。貸金庫の需要が増加しており、顧客が外貨をため込んでいることがうかがえる。
ルーブル防衛に必死のロシア中銀
ロシアの中央銀行を率いるエリヴィラ・ナビウリナ総裁は、この傾向を芽のうちに摘もうと奮闘している。まず、総裁は11月5日に金利を9.5%に引き上げた。これはルーブル預金がドル預金よりはるかに多くの利息を稼ぐことを意味し、ルーブルの魅力を高めるはずだ。
次に、ルーブル防衛のために中銀が行ってきた、小規模で予測可能な1日当たり3憶5000万ドルのドル売り介入に代わり、はるかに規模が大きい臨機応変な介入の可能性を口にすることで、ルーブル安に対する賭けを食い止めようとした。最後に、銀行が通貨に投機を仕掛ける力を抑えるために、ルーブル資金に対する商業銀行のアクセスを制限した。
ナビウリナ総裁は大胆になる必要があった。ルーブル安には根深い原因があり、いずれも消えてなくなるものではない。
1つ目は原油だ。2014年上半期にロシアの輸出は2550億ドルの収入をもたらし、そのうち68%が原油と天然ガスの販売によるものだった。上半期の平均原油価格は1バレル109ドルだった。それが今では80ドルに近い水準だ。