クルーグマンの11月17日のブログに対する読者 (Doug Rife さん) のコメントの翻訳です。

日本のGDPが低下したというニュースは、ケインズ的経済政策はうまくいかない、と主張する人々によって狂喜とともに歓迎されている。実際、今朝のブルームバーグTVのマット・ミラーがはっきりとこういう気持ちを表明していた。しかし、消費税はアベノミクスの一部じゃない。消費税が需要を押し下げると予想されるのは、それが消費に対する税金だからであって、それが所得に対する税金だからじゃない[訳注1]。それに、日本の消費税は、財政赤字をやかましく叫ぶ人々をなだめるために導入されたものだ。

ケインズに反対する人は、消費税を愛し、所得税を嫌う。彼らは、消費に課税することは成長を促し、所得に課税することは、雇用をつくりだす人々が仕事をつくりだすのを妨げてしまう、と主張する。彼らは、高額所得者の所得税を減税するために、アメリカでも消費税が導入されるのを望んでいる。しかし、完全雇用を達成しようとしても需要が低すぎることが問題になる現在の長期停滞 (secular stagnation) の時代には、これは非常にまちがった考えだ。

もし、日本が法人税の最高税率を上げるか[訳注2]、あるいは高額所得者の所得税率を上げて、景気後退を引き起こしたのなら、ケインズモデルを疑ってみるのもいいだろう。しかし、日本で起きたことはこういうことじゃない。日本で起きたことが示しているのは、緊縮財政の大きなマイナスの影響が、多くのケインジアンが想定したよりもはるかに大きかったということだ。

訳注1) 正確な表現ではないです。消費税も所得に課税しているので、ある種の「所得税」ですが、筆者が言いたいことは、日本が「所得税」――とくに高額所得者の所得税――を増税して、景気後退を引き起こしたわけではない。だから、これを所得税増税反対の根拠にすることはできない、ということです。

訳注2) 日本の法人税率は一定。

日本にもGDP低下を喜ぶ人がいます。アベノミクスを止めさせたい人にとって、今回のGDP低下は、アベノミクスの失敗として印象づけることができるからです。(でもGDP低下の一番の原因は消費税増税)