B級コメディーSF映画だ。映画でこんなに笑えたのは「トロピックサンダー」以来だ。
1945年にナチス・ドイツ第三帝国の残党は月面(地球の反対側)に逃げて、そこで第四帝国を作っていた。
そこに地球から来た探査船の乗組員が月面に着陸し、ただちに宇宙親衛隊が乗組員二名のうち、一名を殺害、一名を捕獲した。
捕獲された宇宙飛行士は黒人で、ナチスの洗脳の一環なのか、皮膚が真っ白になる薬剤を投与され、マイケル・ジャクソンの様に真っ白けに“アーリア人化”されてしまう。
更にその黒人が持っていたiPhoneに第四帝国は注目した。そのコンピューターさえあれば、最強の宇宙戦艦“神々の黄昏”が運用できるという。
そして、黒人を連れた親衛隊らが円盤形の乗り物でニューヨーク近郊のマリファナ畑に着陸し、マリファナ栽培者に銃撃されるも損害はなし。てっきりiPhoneを購入するだけかと思っていたら、アメリカ合衆国の大統領に会わせろという風になる。
結局は、第四帝国と地球は戦争になるのだが、ニューヨークにおける空中戦で米空軍が第四帝国軍を撃退した。
ニューヨークにおける空中戦の直前に各国代表がアメリカに集まるのだが、あのUFOはなんなんだという話になり、日本の代表があれが何か知っているのか訊かれるが、知るわけもなく知らない、と答えた。次に中国が訊かれたが、中国も知らない、と答えた。そうすると北朝鮮の代表が「あれは偉大なる首領様が作られたのです」等と得意の妄言、虚言をぶちまけ、全世界の代表ら全員から失笑の嵐を買っていたのが印象的だ。
やがて前線は宇宙空間になった訳だが、アメリカはジョージ・W ・ブッシュという宇宙戦艦をそれまで秘匿しながら保有していた旨を明らかにし、それをもって第四帝国の拠点である月面の裏側を叩こうという事になった。
すると、ロシアは廃棄していた筈のミールが実はまだ現役で存在し、しかもミールは宇宙戦艦の機能を有している旨を明らかにした。
すると、その他各国も実はうちの国も宇宙空間に戦艦を保有していたと次々と白状した。
結局、宇宙空間を軍事利用しないというのを律儀に守っていたのは、フィンランドだけだった。
地球の宇宙戦艦は艦隊となり、第四帝国艦隊と戦闘するが、アメリカの大統領は月面の拠点攻撃に核兵器を使うことに積極的だった。「しかし、女子供もいます」と言われても、アメリカ大統領は「わが国はテロリストと交渉しない」と一括し、宇宙戦艦ジョージ・W ・ブッシュから核弾頭付きの飛翔体を撃ち、月面に住む非戦闘員を虐殺した。
結局、第四帝国は敗北したが、アメリカが真っ先に月はアメリカのものと主張したが、各国も譲らない。第四帝国を打ち負かした途端に各国が月面の領有権を巡り、宇宙空間において戦争になり、全て相討ちになった。
日の丸がペイントされた宇宙戦艦はどこかの国の宇宙戦艦に体当たりをして木っ端微塵になるシーンが印象的だ。
日本人はとにかく体当たり、カミカゼというステレオタイプをそのまんまギャグとして表現していたということだろう。
一見、ナチスへの批判的な風刺の映画のようでいて、実は全人類、所謂国際社会、特にアメリカへの批判的な風刺に満ち溢れた作品だ。
ナチスもどれも似たようなもので、中でもアメリカはナチス以上に断トツで危なくて獰猛な政府だといっているような映画である。
先進国やアメリカの自己批判的なユーモアに満ちた面白い映画だ。