クロマグロ:保護強化へ国際圧力…「絶滅危惧種」指定

毎日新聞 2014年11月17日 21時57分(最終更新 11月18日 03時36分)

クロマグロの漁獲量の推移
クロマグロの漁獲量の推移

 すしネタや刺し身に使われ、日本が最大の消費国である太平洋クロマグロが17日、国際自然保護連合(IUCN)が公表した最新のレッドリストで絶滅危惧種に指定された。指定には漁獲禁止などの法的拘束力はないが、クロマグロの保護強化を求める国際的な圧力がいっそう強まる可能性がある。日本はすでに他国と漁獲規制などに乗り出しており、自主的な資源保護の取り組みで国際批判を回避したい意向だ。【田口雅士、松倉佑輔】

 ◇日本、批判回避へ自主努力

 IUCNは太平洋クロマグロについて「主にアジアのすしや刺し身市場で漁業者に狙われている」と指摘。親魚になる前の未成魚の乱獲で繁殖の機会が奪われ、過去22年間で個体数が19〜33%減少したと推定している。水産庁によると、2012年の親魚の資源量は約2.6万トンで、過去最低だった1984年の約1.9万トンに近づいている。

 資源量の減少を受けて、各海域では漁業国による回復の取り組みが進んでいる。太平洋クロマグロを扱う「中西部太平洋マグロ類委員会(WCPFC)」の小委員会は今年9月、重さ30キロ未満の未成魚の漁獲量を02〜04年の平均から半減することで合意した。日本の提案を受け入れた結果で、24年までに親魚の資源を12年比で約6割増やすことを目指している。

 一方、大西洋クロマグロについては、11年にIUCNから絶滅危惧種に指定されたが、関係国が漁獲規制を強化し、近年は数量が回復傾向にある。

 17日までイタリアで開催されている「大西洋マグロ類保存国際委員会(ICCAT)」の年次会合では、資源回復を受けて日本を含む各国が来年以降の漁獲枠を増やす方向で議論が進んでいる。水産庁は「しっかり管理すればクロマグロは必ず回復する」と強調する。

 ただ今回、太平洋クロマグロについて新たに絶滅危惧種に指定されたことで、資源保護を訴える国際世論は強まりそうだ。野生動植物の国際取引を規制するワシントン条約の締約国会議では、2010年にモナコが大西洋クロマグロの禁輸案を提出し、賛成少数で否決されたこともある。

 16年の会合で太平洋クロマグロの禁輸案が提案される可能性もあり、日本は保護強化に向け更なる対応を求められる可能性もある。

 ◇クロマグロ◇

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