普天間移設:「知事が代わったからといって…」政府側静観

毎日新聞 2014年11月17日 20時07分(最終更新 11月18日 01時45分)

 沖縄県知事選で、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設に反対する翁長雄志前那覇市長が当選した。政府は予定通り移設を進める方針だが、翁長氏は行政権限を行使して辺野古移設に反対する構え。政府内には沖縄振興費の確保を盾に翁長氏の翻意を促す考えもあるが、かえって反発を招きかねず、当面は翁長氏の出方を見守ることになりそうだ。

 菅義偉官房長官は17日の記者会見で「辺野古移設を粛々と進めたい」と述べ、移設方針に変更はないと強調。政府関係者は「日本は法治国家で、知事が変わったからといって、行政上の裁量で不承認とすべきではない」と翁長氏を批判した。

 政府が翁長氏対策に使おうとしているのが沖縄振興費だ。菅氏は会見で「振興策はバラマキではない。(翁長氏の)考え方を聞く中で、行うべきことは行うのは当然だ」と説明したが、同時に「当選した方の考えを見極めた上で政府として行う」とも語り、翁長氏の姿勢いかんでは振興内容を再検討することに含みを持たせた。

 2021年度までの沖縄振興計画の期間中に、政府は毎年3000億円台を確保する方針だ。こうした財政支援を踏まえ、仲井真弘多知事は辺野古移設に同意した。ただ、沖縄では「振興費をアメにしている」との批判も出ている。

 こうした政府の姿勢に、翁長氏を支援した野党は反発している。共産党の山下芳生書記局長は会見で、「民意を無視して新基地建設を強行する安倍政権への厳しい審判が下った。沖縄の民意をしっかり受け止めるべきだ」と強調。社民党の又市征治幹事長も「新基地建設の断念、普天間飛行場の閉鎖、撤去に尽力する」との談話を出した。

 衆院選に向け、共産党などは辺野古移設問題を争点化し、与党を追い込みたい考えだ。ただ、自民党幹部は「解散・総選挙の動きで知事選の結果は吹き飛ぶ」と語る。

 与党時代に県外移設から辺野古容認に方針転換した民主党は知事選で自主投票だった。同党幹部は衆院選への影響に関して「主要政党には方針に違いが無いので、あまり影響は無い」との見方を示した。【福岡静哉、木下訓明】

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