4月に消費税率を5%から8%に引き上げた後の日本経済は、回復が想定よりも遅れているといわざるを得ない。
内閣府が発表した7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質ベースで前期比年率1.6%減った。4~6月期に続き2四半期連続のマイナス成長である。
多くの民間エコノミストが2%前後のプラス成長を予想していたことからも、驚きだ。東京市場では株価が大幅に下落した。
振るわなかったのは、個人消費だ。7~9月期は前期比で増加に転じたとはいえ、小幅の伸びにとどまった。
自動車など高額の耐久財の購入が手控えられた。天候不順の影響でレジャーなどへの需要が落ち、サービス消費も足踏みした。
設備投資や住宅投資も減った。公共投資や輸出は持ち直したものの、実質経済成長率をプラスにするほどの力はなかった。
しかし、景気の先行きを過度に悲観する必要はないだろう。
マイナス成長の最大の要因は、在庫投資の大幅な減少だ。在庫投資の分を差し引けば、プラス成長を保つかたちだ。
在庫が増えれば成長率を押し上げる。逆に在庫が減れば成長率を押し下げる。企業は7~9月期に、4月の消費増税後に膨らんだ在庫を減らした。在庫調整の進展により先行きの生産は持ち直す兆しがある。
賃金総額を示す名目雇用者報酬の伸び率はほぼ17年ぶりの高さとなった。高水準の企業収益を背景に、企業が雇用・賃金を増やす好循環の動きは続いている。
民間エコノミストの間では10~12月期以降の実質成長率はプラスに転じるとの見方が多い。
安倍晋三首相は7~9月期のGDP統計を踏まえて10%への消費再増税の延期を決める意向だ。
再増税の是非は10~12月期以降の景気の足どりを確認してから最終判断する手もあったのではないか。2四半期連続で実質成長率がマイナスになるなかで、いま再増税を決めるのが難しいのはたしかだろう。
大事なのは、デフレ脱却に向けた好循環の動きを途切れさせないことだ。政府は法人減税や規制改革で成長戦略を加速すべきだ。企業も生産性の上昇にあわせ、賃金や配当の形で家計への還元を着実にすすめてほしい。