中央鉱山保安協議会-議事録
日時:平成21年2月26日(木)10:00~11:20
場所:経済産業省別館3階第4特別会議室(346)
出席者
学識経験者:
榎本委員、金子委員、小出委員、富樫委員、山冨委員、吉本委員
鉱業権者代表:
阿部委員、池田委員、大関委員(代理:田村)、北川委員、齋藤委員、戸高委員、中島委員(代理:村上)、福島委員、吉田委員
鉱山労働者代表:
浅野委員、沖中委員、栗田委員、小島委員、嶋田委員、竹内委員、南波委員、濱渕委員、藤井委員、松下委員
議事
審議事項
- 鉱山保安法施行規則の一部改正について
報告事項
- 鉱山保安法施行規則に基づき経済産業大臣が定める基準等(告示)の一部改正について
- 鉱業上使用する工作物等の技術基準を定める省令の技術指針(内規)の一部改正について
- 石油鉱山保安部会について
- 鉱山災害防止対策研究会について
- 石炭じん肺訴訟の状況について
- 平成21年度鉱山保安関係予算・財投について
- 平成20年度全国鉱山保安表彰について
議事概要
- 事務局
定刻になりましたので、ただいまより「中央鉱山保安協議会」を開会させていただきます。(配付資料の確認)次に当協議会の委員の皆様のうち、前回の協議会以降、所属先の関係などにより交替がございましたので、御紹介させていただきます。先ほどの資料1-1の委員名簿をご覧ください。今回、山冨二郎委員、後藤敬一委員、福島秀男委員、栗田宏幸委員、小島弘幸委員、竹内正次委員、濱渕正幸委員の7名が新しく就任されています。また、事務局においても鉱山保安課長が渡辺から嘉村に交代しております。なお、本日は、在原委員、風間委員、藤田委員、名古屋委員、後藤委員が所用により御欠席となっております。大関委員の代理として、田村様に、中島委員の代理として、村上様に御出席いただいておりますよって、本日は、協議会委員30名中、本人出席が23名、代理出席が2名、かつ、学識経験者委員、鉱業権者を代表する委員及び鉱山労働者を代表する委員のそれぞれ半数以上の御出席をいただいていることから、鉱山保安協議会令第4条第1項の規定により、本日の協議会は有効に成立しますことを御報告いたします。続きまして、中央鉱山保安協議会会長の互選に移らせていただきます。資料1-2をごらんください。先程、委員の交替について御紹介させていただきましたが、これまで内野委員に当協議会会長を務めていただいておりましたが、御都合により御退任となりましたことから、鉱山保安法第56条第1項の規定に基づきまして、学識経験者の委員から会長を互選により選出していただきます。どなたか御推薦をお願いします。
- 齋藤委員
会長には、鉱山保安の造詣が深く、また委員の御経験も豊富な山冨委員にお願いできたらと考えておりますが、いかがでしょうか。(「異議なし」と声あり)
- 事務局
それでは、山冨委員に中央鉱山保安協議会会長をお願いすることとし、今後の議事進行をお願いいたします。
- 山冨会長
ただいま、中央鉱山保安協議会の会長に御選任いただきました山冨でございます。それでは、本日の議事に進んでまいります。まず、原子力安全・保安院の薦田院長からご挨拶をいただきます。よろしくお願いします。
- 薦田院長
おはようございます。原子力安全・保安院長の薦田でございます。本日はお忙しいところ、また、寒いところをお集まりいただき、誠にありがとうございます。御存じのように、当協議会でございますが、今回、1年ぶりの開催となるわけでございます。この間、岩手・宮城内陸地震など、いろいろな出来事がございました。やはり、国民の安全・安心への関心というものはますます高まっているのではないかと我々は認識をしているところでございまして、保安・安全規制を担当する者といたしまして、改めて、国民の安全・安心な生活に向け、しっかりと取り組んでいかなければならないと考えているところでございます。このような中、鉱山保安の分野では、新たに第11次鉱業労働災害防止計画というものを策定いたしまして、鉱山災害の撲滅に向け、行政、そして、事業者、関係者が一丸となって取組みを開始した年でありましたが、初年度という非常に大事な年であったにもかかわらず、近年、この下げ止まりの傾向が続いておりました災害件数におきまして、死亡災害が一昨年を上回るという非常に残念な結果となっているところでございます。このような結果も踏まえまして、後ほど御報告させていただきますが、昨年12月から協議会の一部委員の方々にも御参加をいただきまして、また、鉱山会社の保安担当者にも御参加を賜りまして、鉱山災害の発生要因の分析、そして、その対策につきまして検討を行っているところでございます。原子力安全・保安院といたしましては、安全規制に携わります行政機関と致しまして、職員一人ひとりが国民の安全を確保するという高い使命感を持ちまして、本年も国民の皆様方の期待を反映した鉱山保安行政の実現に努めていきたいと考えているところでございます。引き続き、御指導よろしくお願い致します。なお、本日は規則関係についての御審議、それから、石油鉱山保安部会、先ほどお話をいたしました研究会の検討状況などにつきまして御報告をさせていただきたいと思っております。是非とも御忌憚のない意見を賜りますよう、よろしくお願いいたします。
- 山冨会長
どうもありがとうございました。それでは、議事の方に入りたいと思います。本日の議題ですけれども、お手元の資料にございますように、審議事項が1件、報告事項が7件となっております。まず審議事項であります「(1)鉱山保安法施行規則の一部改正について」、事務局から御説明をいただきます。よろしくお願いします。
- 嘉村鉱山保安課長
(資料2について説明)今回の改正ですが、行政改革推進本部事務局が平成20年3月31日に定めた、国からの指定等に基づき特定の事務・事業を実施している法人に関する規制の審査、国の関与等の透明化・合理化にする基準に関する閣議決定に基づく措置内容に基づき、本年度中に関係法令の規定整備をすることとなっております。鉱山保安法においても、放射線業務従事者に係る放射線管理記録の引渡し機関の指定に関する規定を設けていることから、同じような放射線管理記録の管理をしている機関の指定制度を持っております他法令とともに、関係規定を整備するという内容でございます。既に休止しておりますけれども、人形峠とか東濃鉱山といったウラン鉱山において、堆積場の管理といったことを続けております。これに従事されている方の放射線障害防止の関係が鉱山保安法においても、規定として存在しているということでございまして、これまでも指定についての条項はございましたが、指定にあたって、どういう場合に申請をして、どういう基準で指定がされて、場合によっては基準を満たさなくなった場合に、指定の取り消しや報告徴求をするなど、そういった手続関係の規定を整備するものでございます。なお、既に指定機関自身は存在しておりまして、昭和53年1月に(財)放射線影響協会を現行規定に基づき指定をしておりますが、その詳細の手続が法令できちっと定められていなかったものを整備するものでございます。スケジュールといたしましては、本年3月末までに改正省令の公布、施行となります。
- 山冨会長
ありがとうございました。ただいまの事務局からの説明について、御質問などがございましたらよろしくお願いいたします。よろしいでしょうか。それでは、本省令改正につきましては、事務局から説明のありましたとおり、今後、所定の手続を進めるということを了承するものといたします。なお、現在、パブリック・コメント中でありまして、もし軽微な変更等が発生した場合については私の方に御一任いただきたいと思います。よろしくお願いします。それでは、次の議題に移ります。先ほど申しましたように、以降の議題は報告事項でございますけれども、まず「(1)鉱山保安法施行規則に基づき経済産業大臣が定める基準等(告示)の一部改正について」、事務局より説明をお願いいたします。
- 柏葉石炭保安室長
(資料3について説明)概要を御説明いたします。これは粉じん濃度管理に係るものでございます。1.の(1)でございますけれども、基本的には労働者の危害防止というものは、厚労省の労働安全衛生法が一般的に適用されておりますけれども、鉱山の保安については労働安全衛生法が適用除外となっており、鉱山保安法がみるという形になっております。(2)で、主な法律が出てまいりますけれども、基本的には鉱山保安法というものがございまして、その法律を施行するという形で鉱山保安法施行規則というものが定められております。そして、具体的な基準等は、その規則に基づきまして告示で規定するという形になっておりまして、今回はその告示を改正するということでございます。(3)に書かれておりますのは、その告示の内容でございますけれども、作業場の粉じん管理濃度の算定式を改正するということで、2.にございます。まず、2.(2)の方を最初に御説明いたしますと、旧の式と新式がございます。旧の式というものは平成17年3月の告示で示されておりますが、新しい式はそれを改正したもので、今年4月に施行を予定しているものでございます。具体的に、どのように違うのかと申しますと、この式のEというものは粉じん管理濃度、mg/m3を示してございます。例えば旧の式でありますと、遊離けい酸含有率が100%のとき、管理濃度は0.05mg/m3になります。新式でありますと、遊離けい酸分が100%のときには管理濃度が0.025mg/m3という形になって、倍に強化されるという式になっております。ここで言っている遊離けい酸分という考え方は、端的に言えば石英という形で考えていただければ結構でございます。石英、シリカとも申しますけれども、これは発がん性を有する物質という形で認められてございます。この算定式を変えるに当たりまして、管理濃度の改正に当たりまして、米国産業衛生専門家会議、ACGIHという機関と、日本では社団法人日本産業衛生学会という2つの研究組織がございまして、最新の知見を基に暴露限界値というものを勧告してございます。アメリカの産業衛生専門学会では、0.025という値。日本産業衛生学会では、0.03という値を勧告してございます。それで、今回は0.025というアメリカの値を用いてございますが、基本的な考え方は同じですが、アメリカでは、けい肺病を予防するという考え方と、肺がんの発病予防という概念で0.025というものを勧告してございます。けい肺というのは、けい酸質を吸うのでけい肺というものになります。じん肺というのは、そもそもアルミを吸えばアルミ肺になりますし、そういう形で総体的にじん肺と申します。日本産業衛生学会も同じような考え方ですけれども、基本的にはけい肺症の発病予防ということと、それが発がんの抑止につながるということで、発がんというところについては余り強くは出してございませんでした。いずれにいたしましても、発がんという考え方等を考えますと、0.025という厳しい値をもって対応した方がよろしいという概念の下で、健康被害の要因除去の観点から0.025という暴露限界値を用いることにいたしました。次のページで、今後の予定ですが、交付は平成21年3月上旬で、施行については21年4月1日を予定してございます。これにつきましては、ちょうど厚生労働省の方で同じように管理濃度の改正をやってございます。この粉じんの管理濃度の改正のほかに、新しい物質、例えばニッケル化合物について新しく0.1mg/m3という規制値を設けましたし、規制値を変更した項目でいけば、トルエンという物質について50ppmから20ppmに下げた。それで、新規が2と、改定が17種類ぐらいの物質について、厚生労働省の方では改正し、パブリックコメントを終了し、施行を4月1日という形で私どもと一緒の形の施行日を考えております。ただ、厚生労働省の方はパブリックコメントでの意見等のとりまとめをしておりまして、4月1日の施行については、今後の作業によっては少しずれ込む可能性があるかもしれないということでございます。
- 山冨会長
ありがとうございました。ただいまの事務局からの説明について、御質問等がございましたらお願いいたします。
- 阿部委員
本件に関しては、これはこれで賛成でよろしいと私は思うんですけれども、1つだけお願いがございます。これは直ぐできるか、できないかは別としまして、今、それぞれの労働者がどれだけ暴露されているのか。労働者の暴露のサンプリングといいますか、例えば暴露の管理指標を作っていただければ、よりよく運営していけるのではないかと思います。
- 山冨会長
ありがとうございました。事務局、いかがでしょうか。
- 柏葉石炭保安室長
現在、個人サンプラーを着けて、国内で試験的に会社で取り組んでいただいているのは、まさに、今、委員の方から御発言がありました菱刈鉱山でして、いろいろデータ収集をやられていると聞いております。基本的に日本では、作業環境の雰囲気をつかまえるという考え方。アメリカでは、個人暴露を測定するという考え方でやってございます。アメリカの場合ですが、個人にサンプラーを着けて、粉じんの暴露基準、限界値を決めて、それで、そこの作業者に対する作業時間の制限とかをやっております。ただ、現在、厚労省とかいろいろ勉強させていただいておりますけれども、現状は、作業環境をまず把握し、けい肺のリスクを低減しようという形で、臨んでございます。委員からお話がありました件につきましては、今後の検討課題とさせていただきたいと思います。
- 山冨会長
ありがとうございました。他にございませんでしょうか。それでは、本件、告示改正につきましては、阿部委員からの御発言もありましたようなことも将来の検討課題としながら、事務局から説明のありました内容に沿って所定の手続を進めることを了承したいと思います。よろしくお願いします。続きまして「(2)鉱業上使用する工作物等の技術基準を定める省令の技術指針(内規)の一部改正について」ということで、事務局より再び説明をお願いいたします。
- 柏葉石炭保安室長
(資料4について説明)1.には、その体系の流れが書いてございます。先ほどの御説明と同じように、まず鉱山保安法というものがございます。そして、鉱山保安法の施行規則という形で、鉱業上使用する工作物等の技術基準を定める省令というものがございます。ただ、これは性能規定化されている書きぶりのために、その詳細につきましては内規というもので技術指針を策定してございます。それが(2)に書いているものでございます。技術基準は性能規定化されているために、解釈の内規として技術指針を定めてございます。ここで「内規」と言っておりますが、これは行政側だけが見ているものではなくて、すべてオープンにしてございます。そういう内規でございます。今回の改正でございますけれども、一応、技術指針という考え方には、どのような技術基準に適合するのかということで、具体的には日本工業規格であるJISと、国際電気標準会議であるIECの規格というものを技術指針のところでは引用してございます。今回の改正の点は2点ございます。1点は火薬類。2点は電気機械器具でございます。1点目の火薬類について御説明いたします。2ページ目をお開き願いたいと思います。文章だけでは少しわかりにくいところがございますので、2ページ目の「3.本改正の内容」ということで、火薬類。それで新、旧というものがございまして、旧の方は「検定爆薬及び検定雷管の安全度試験方法」と書いてございます。実は、この旧のJISの中では、平成17年4月1日から鉱山保安法が改正になり、施行されておりますけれども、そのときに廃止された鉱山坑内用品検定規則というものを、このK4811の旧のJISで引用されておりました。要は、廃止された規則を引用されたままになっておりますので、このJIS自体を改めなければならないということで、今回、K4811というものを改正という形で、2月20日に官報に掲載になってございます。JISのK4811が改正されなかったことによって、どのような障害があったかということにつきましては、まさに私ども事務方の失点でございますが、現在、平成17年4月の改正後に新たな種類の火薬類が生産されていない。要は、旧の鉱山保安法で認められた火薬類についてはそのまま使用ができるという形のもので使用されておりましたので、特段の支障はございませんでした。この改正にあたりましては、JISを改正するには膨大な作業になるということでございましたけれども、JISの担当部署、または日本火薬工業会とか日本規格協会等、また、実際に火薬を使っております釧路炭鉱からもいろいろお話をお聞きし、また、火薬製造メーカーのカヤク・ジャパンというところからもお話を聞きしながら改正したものでございます。これが1点目です。2点目は、電気機械器具でございます。1ページ目の2.(2)で、防爆に係る仕様については、IECが国際的な規格を策定している。また、一部異なるところはございましたが、JIS規格としても策定されており、保安上は特段問題もなかったことから、両方の技術指針を引用しておりました。次の2ページ目をお開きください。ここで電気機械器具の改正をすべきものとして5点ほど挙げてございます。まず、「(2)第2号の電気機械器具」というものがございまして、現行では(1)として、これは耐圧防爆でございますけれども、日本工業規格C0931というものがございます。それに対して、IECの規格でいきますと60079-1となってございますが、この規格につきましてはJISで昨年、2008年2月25日に、左側にございますように「日本工業規格C60079-1(爆発性雰囲気で使用する電気機械器具-第1部:耐圧防爆構造“d”)」という形で直してございます。(1)から(5)までにつきましては、五月雨式に改正がなされましたので、その改正がすべて終わったということと、中身の確認をいたしまして、今回、JISとIECの規格は同一でございますが、併記をする形で改正案を直してございます。同じものを併記で直すというのであれば、片方を削った方がいいのではないかという意見等がございますが、今までIECで用いている方とか、JISで用いている方とかが混在してございますので、そこは両面の併記でいく。そもそも、この防爆につきましては、厚労省の労働基準局安全衛生部安全課というところで同じように、防爆の一般企業に対する、鉱山以外のところに対する監督指導の指針を示してございますが、そことも御相談させていただきました。両論併記については、おかしな見方もできますけれども、日本工業規格の中で、防爆の試験方法を若干変えなければならないのかどうかという検討をしているという話がございますので、一応、今回のものをここに書いておくということで、次回に直ったときに、また、それを追跡できるので、併記という形で用いた方がいいとしたものです。今回につきましては、IECの国内小委員会、要は日本でもIECの防爆に対する検討の専門委員会等がございますけれども、そのメンバーの方にも御相談をしながら改正させていただきました。
- 山冨会長
ありがとうございました。ただいまの事務局からの説明につきまして、御質問等がございましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。それでは、本件の内規改正につきましては、事務局から説明のありました内容に沿い、所定の手続を進めることを了承いたします。これにつきましても、現在、パブリック・コメント中でありますので、軽微な変更につきましては私の方に御一任いただきたいと思います。それでは、次の議事に移らせていただきます。次は「(3)石油鉱山保安部会について」であります。本部会では、天然ガスの地下貯留に関する安全基準につきまして昨年12月から検討を行っております。これにつきまして、事務局からの報告をお願いいたします。
- 嘉村鉱山保安課長
(資料5について説明)石油鉱山保安部会は、これまで石油鉱山の保安に関する重要事項について調査審議をするということで、学識経験者並びに関係事業者、海洋関係の専門家といった方々に御審議をいただいてきました。最近の実績といたしましては、平成18年から19年にかけまして「海洋掘採施設等の廃止措置に関する基本的な考え方について」といったことをまとめてきております。さて、今般の審議の内容でございますが、先程、山冨会長からも御紹介がありましたように、天然ガスの枯渇ガス田を利用した地下貯蔵に関するものです。天然ガスは、ほかの化石燃料と比べますとCO 2の排出量も少なく、クリーンなエネルギーということで、その需要が国内では非常に拡大してきております。これに伴って、天然ガスの貯蔵先として枯渇ガス田の利用についても、より多くの貯蔵をする場面が考えられるようになってきているという実態がございまして、実際、そうした計画をお持ちの事業者の方がおられるということになっております。既に地下貯蔵につきましては昭和43年に国内では開始されておりまして、従来から経験は十分積んできているわけでございますが、今回の課題は、貯蔵対象ガス田の開発当初に存在していた自然状態の圧力、初期圧力という言い方をしていますけれども、この範囲内で今までは貯蔵が行われていたということなんですが、この初期圧力を超える圧力での貯蔵について、これまで日本で行われてこなかった状況でございますので、これについて技術的な検討を行いまして、国外で実際に実施しているアメリカとかドイツでの規制動向、実態を把握いたしまして、鉱業権者が講ずべき適切な措置を決めていこうという目的のものでございます。検討は、既に昨年の12月4日に第1回の部会を開催させていただきまして、先週、第3回を開催し、来月の3月24日に4回目の部会をやって、まとめていこうという予定でございます。内容的には、圧力を大きくしたときに、模式図に書いてありますように、ガスの下に水の層が通常はあるのですが、その界面が下がっていって、いわゆるスピルポイントと言われますキャップロックの、キャップしている構造の一番下の方からこぼれ出すというようなことが考えられたりとか、あるいは圧力が上がりますので、キャップロックと言われるガスをとめている層が、そのシール性が壊れて、浸透とか亀裂とかといったようなことが起きる可能性があるという問題でございます。したがいまして、これを行う場合の保安ということで、事前にそれぞれの対象ガス田において、ガス田の構造とかキャップロックがどういうものかについては違いがあると考えられますので、事前にそれを評価していただくということ。スピルポイントについても、どういう位置になるとこぼれ出すのかというようなことを評価し、坑井自身の、比較的、廃止ガス田でございますから、中には坑井の健全性が十分ではないことも考えられるということで、そういう坑井の健全性とか、古い坑井が残っているものに対して、そこから漏れてこないかというようなことの確認とか、そういう事前確認をした結果、最大貯蔵圧力というものをどうすればいいかとか、貯留層内に断層が存在することがわかっている場合にどういうことを考えた方がいいかとか、坑井についてはどういう措置をした方がいいか、それから、どういう監視の仕方、圧力を見るとか、ガス水界面を測定していくとか、そういったことが考えられないか。更には、実際、アメリカのカリフォルニアでは、初期圧力を超えたかどうかが実はわかっていないんですが、ガスが漏れたケースが報告されておりまして、そういった例を見ましても、万が一のことでございますが、十分管理をされればそういうことはないという前提ではございますけれども、漏洩時にどうすればいいのかというようなことも決めておくことが大事なのではないかということで議論を進めているところでございます。いずれにしましても、石油鉱山保安部会の結論を今年度内で得まして、その結果、省令とか内規にどういうふうに反映していくかということを私どもで作業いたしまして、本年の8月下旬ぐらいまでに、この中央鉱山保安協議会の場においても、省令の改正ということになりますと審議事項でございますので、御説明をさせていただき、御了承いただけるような形にしたいと思っております。
- 山冨会長
ありがとうございました。ただいまの事務局からの報告について、御質問などございましたらよろしくお願いいたします。よろしいでしょうか。それでは、次の議事に移ります。次は「(4)鉱山災害防止対策研究会について」でございます。本研究会は、改正鉱山保安法施行後の災害発生要因の分析と対応策について昨年12月から検討を行っております。事務局から報告をお願いいたします。
- 嘉村鉱山保安課長
(資料6について説明)本研究会ですが、ただいま、山冨会長からも御案内いただきましたように、平成17年4月に改正鉱山保安法が施行されて、新しい考え方としてリスクマネジメントという考え方が導入され、鉱業権者が自由度を持って、自らの考え方でそれぞれの鉱山現場での危険把握とか、対策の見直しができるという考え方が取り入れられ、改正前の鉱山保安法の考え方とかなり変わっていることもございまして、その結果、鉱山災害にどういう影響が生じているかということを見極めたいという趣旨でございます。現状、重症災害については、件数としては大体40件前後、若しくは40件を切るぐらいという状況になってきておりますが、若干、下げ止まり傾向と言いますか、昨年でございますと、先程、院長の挨拶にもございましたように、死亡災害が、どうしても年に数件発生しております。このため、どういう対策を取ればこれが減っていくかについて、かなり難しい課題ではあると思いますが、鉱山保安法がやはり大きく変わったということについての状況を正しく認識した上で、法令上も施行から5年経過後の見直し規定が附則に設けられておりますことから、このような機会もあわせて適切な対応を考えていこうという趣旨で開始されたものでございます。研究会においてとりまとめられた結果につきましては、当然のことながら、中央鉱山保安協議会に御報告を致しますし、対応策の内容が法令の変更を伴うものであれば、協議会の了承を頂くという流れになってくる話でございます。それでは、検討の内容としてはこれまでどんな感じでやってきているかというのを簡単に御説明いたします。検討は、昨年12月8日に第1回の研究会を開催し、1月21日に第2回を開催しております。実は第3回が明日に予定されておりまして、そこで少しとりまとめの骨子みたいなものを事務局から出させていただいて、議論を進めようという段階であります。内容といたしましては、災害の発生状況について全体のトレンドというものをしっかり押さえた上で、改正前と改正後でどんな感じに変化があるのか。全体としてはそんなに大きな変化がないということではあるんですけれども、それを一応、データとして確認する。それから、災害が実際に起きているものについて、項目別にどんな災害の実態になっているのかを推移で見ていくということで、(1)から(8)までで状況を把握しております。最近の状況では、直轄だけではなくて請負とか、実際の鉱山労働者と言えない方の出入りが多くなったりとか、非定常作業と言われる作業が多くなってきたりといった実態があるというふうに聞いておりますので、その状況、また経験年数が非常に浅い方とベテランの方とで二極分化しているという感じがわかってきておりますので、そういったことの件数の状況でございますとか、実際、災害が起きたところについてはリスクマネジメントをどういうふうにやってきているのか、リスクマネジメントまではやっていない、あるいは非定常作業などではリスクマネジメントはできないということも言われておりますので、危険予知とかヒヤリハットとか、従来からやっておられることについてはどうだったのかなども含めて分析を進めております。また、リスクマネジメントの前提となります現況調査のリスク抽出が非常に難しいのではないかという意見や、小規模な鉱山においては、そもそも実行する人的資源も乏しいという問題などもあり、リスクマネジメントがなかなか定着しないという問題も出てきているという状況でございます。更に、やはりどうしてもヒューマンエラーと言われる、最近、そういう傾向の災害が、鉱山でも多いというような課題が出てきております。それに向けた対応策としては、特に保安教育の話など、もう少し深く検討した方がいいのではないかという感じにもなっておりますので、ここに書いているようなことも含め、更に検討を進めたいということでございます。以上の点について、早稲田大学の名古屋先生を座長として、中央鉱山保安協議会の委員にも御参加いただきまして、あるいは業界の代表者の方にもそれぞれ御参加いただきまして、検討をしているところでございます。いずれにしても、本結論については、更に私どもの方で課題を整理し、法令に反映すべき問題があればそういう検討をする場を設けるとか、それぞれの課題に応じて、どこでどういうふうに検討するかを整理いたしまして、中央鉱山保安協議会において御報告させて頂くとともに、法令の見直しの場合には審議をしてもらおうという予定でございます。今後、改正鉱山保安法の5年経過後の見直し作業が、この中央鉱山保安協議会での検討の中心になってくるかと思いますので、今年の夏以降、ちょうど5年目に達するのが来年の3月でございますので、そこまでの状況を一応把握した上で、その後、恐らく来年の夏とか秋とかまでに見直しの必要性について協議会で結論を出していただければというような流れを考えております。いずれにしましても、法令見直しのスケジュールについては、次回会合において御報告したいと思います。
- 山冨会長
ありがとうございました。それでは、ただいまの説明について、御質問等がございましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。それでは、次の議事に移らせていただきます。次は「(5)石炭じん肺訴訟の状況について」で、事務局から報告をお願いいたします。
- 柏葉石炭保安室長
(資料7について説明)石炭じん肺訴訟の概要を1.で書いてございますが、粉じんを吸い続けることによって、肺に障害が生じるという病気でございまして、症状が進行して、不可逆性のもので治るということはございません。石炭じん肺訴訟は、過去、炭鉱で就労していた労働者の皆様が、または遺族の皆様が、国及び石炭企業を相手取って損害賠償を求めていたものです。昭和60年12月の筑豊じん肺訴訟、これが国を相手にした初めての訴訟でして、平成16年4月27日の最高裁判決で国が敗訴しました。石炭鉱山保安規則の改正を行っていなかったということで、保安規制権限不行使の違法が確定しました。湿式削岩機等を用いて対策を講じていなかった、昭和35年4月から昭和61年11月までが違法期間として認定されてございます。この判決を踏まえ、国は3つの要件を充足する原告と早期に和解してございます。要件を充足しない原告とは判決を求めていくという方針で「炭鉱坑内で就労実績があること」「じん肺であること或いはじん肺で死亡したものであること」「損害賠償請求権の期間内の提訴であること」という3つの要件を充足する原告の皆様と和解をしてございます。初めての和解は、平成16年12月15日に行ってございます。なお、最近では、合併症についての話がございまして、平成19年8月1日に国が敗訴し、判決後、和解ということで、同年8月9日に和解してございまして、じん肺患者の救済範囲を拡大してございます。また、平成21年1月26日の芦別じん肺訴訟において和解が終了し、原告約1,600名、患者ベースで約1,000名の和解が成立して、77億円の和解金を支払ってございます。今後、和解が見込まれる原告の皆様は620名、患者ベースで611名でございまして、今まで和解した、また、今後和解が見込まれる方の支払いというものは、大体124億円になる見込みでございます。次の2ページですけれども、現在係争中の石炭じん肺訴訟は、(1)の西日本、これは福岡でございます。(2)が北海道という形で、先ほど述べましたとおり、(3)の一番下で611名、約46.6億円の和解金の見込みがございます。さて、現在、争ってございますものが1つございます。それは消滅時効でございます。消滅時効というものは、民法第724条で「不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。」これが消滅時効の規定でございます。また、不法行為のときから20年というのは除斥の考え方でございます。それで、これは昨年4月に提訴された方々について、提訴の中身からしますと、約9名ほど消滅時効に該当するということで、6月27日に札幌地裁で消滅時効の援用を行っております。そのときに、国は答弁書を出して、提訴されている方の中で、9名の方が消滅時効に該当するという疑いがございました。また、5次の提訴という方もございまして、その方につきましては7名が消滅時効の成立の可能性があるということで、今、裁判所に判断を仰ぐという形を取っております。まず、最初の9名につきましては平成20年6月27日に援用、国が答弁書を出しまして、引き続き原告側が11月に反論いたしまして、今年の2月に国が準備書面を示すとともに、原告もまた、陳述等を行ってございます。次回は今年の5月29日に行うということで、一応、原告側としては権利の濫用であるとして、わかりやすく言いますと、国という大きな組織が個人という小さなものに対して、そのような権利を濫用していいのかという主張をしてございます。原告は、国の答弁書、準備書面等について求釈明を求めておりますが、2月20日の裁判では、裁判長としては、国として求釈明はこれで足りているのかなという言いぶりを示しましたが、原告側からは、国はまともに答えていないということで、また5月29日に原告側の主張、または国がそれに対して反論するかは、これから進行協議で決めるということになってございます。現在、法務省では、時効について検討会をやっておりますが、それはこの消滅時効の形ではなくて、公訴時効というものがありまして、何年以内に訴えなければだめということで、例えば死刑であれば25年以内に訴えなければ公訴の時効が生じるということで、今、我々が争っている消滅時効のところではなくて、公訴時効のところについて、法務省は検討しているということでございます。権利の濫用という話がございますけれども、権利の濫用が許されるケースというものは最高裁の判例でありまして、債務者という加害者が、債権者という被害者に対して訴訟提起を妨害した場合と、また親族間に争いがある場合には、その消滅時効期間内に提訴するのが遅れるだろうというのが最高裁の判例で示されてございます。一応、国としてもそういう判例をもって主張してございます。いずれにしても、疑いのある方については、個々にどういう事情で遅れて提訴がなされたのかということをお聞きした上で、和解に応じる必要性がある場合には、国としては誠意を持って対応したいと思っております。
- 山冨会長
ありがとうございました。ただいま御説明について、御質問等がございましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。それでは、次の議事に移ります。次は「(6)平成21年度鉱山保安関係予算・財投について」、事務局から説明をお願いいたします。
- 嘉村鉱山保安課長
(資料8について説明)まず最初の「I.休廃止鉱山の鉱害防止対策」でございます。御案内のように、金属鉱業等の鉱山におきましては、閉山後も重金属、カドミウム、砒素等の有害物質を含む坑廃水が永続的に流出するという特殊な問題がございます。これについては金属鉱害等特別措置法をつくりまして、計画的に、着実に実施しているところですが、完全に終了するというわけにはいかない状況です。対策を昭和40年代に始めた時は、1,000を超える鉱山が対象でございましたけれども、今は100位まで減ってきておりますので、そういう意味での大きなトレンドでは成果を上げておりますが、最近、やや改善するところが難しいところが増えてきておりますので、引き続き、休廃止鉱山の鉱害防止等工事等をやっていく必要があるということでございます。大きく分けて、地方公共団体が行います義務者、いわゆる鉱業権者がいなくなった義務者不存在の工事と坑廃水処理に対する補助と、鉱業権者のいわゆる自らが行った責任のない部分ということで、自然汚染分、他者汚染分といったものの処理費用に対する補助金の交付という2種類に分けてやっておりまして、引き続き、この事業を、トータルで21億円強手当しております。この補助金に加えまして、中長期的に国民負担となっている鉱害防止事業、坑廃水処理事業について、少しでもコストを削減できないかということで、新しい技術的な可能性を追求するということで、技術開発委託費、調査研究委託費と、2本立てで調査研究、技術開発をやっております。次に、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の鉱害防止支援事業ですが、JOGMECの中に鉱害防止部門というものがございまして、JOGMEC自身の交付金の中に支援業務を実施しております。また、鉱害防止融資というものを従来からやっていただいておりまして、鉱害防止事業を事業者が行う場合の資金融資など、全体として昨年並みとなっております。「II.石油・天然ガス鉱山の鉱害防止対策」の「1.海洋石油開発環境影響調査」でございますが、海洋掘採施設の撤去作業とか、新たな石油掘採の実施に向けて、その場合の海洋に与える影響の調査とか、それに伴って、関係法令を整備するための調査ということで、ここに書いてあるような調査を行っております。若干、金額が減っておりますが、施設の環境影響調査の方で、船の手配など作業自身が大きく遅れている関係で、21年度はこの金額でできるということでございまして、また必要な予算を手当てして調査を続けることになっております。「2.廃止石油坑井封鎖事業」については、秋田県秋田市の方で廃止された坑井から石油が漏れ、回収したドラム缶が幾つもたまってきている状況にあることから、こうしたものについて、地方公共団体に補助金を交付して、確実に封鎖事業を行う必要があるということで、あらためて予算措置をしたということでございます。「III.鉱山の保安確保のための対策」ですが、私どもの産業保安監督部が監督検査等を実施していくための庁費等でございます。
- 山冨会長
ありがとうございました。ただいまの説明について、御質問等がございましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。それでは、最後の議事に移りますけれども「(7)平成20年度全国鉱山保安表彰について」、事務局から報告をお願いいたします。
- 嘉村鉱山保安課長
(資料9について説明)「全国鉱山保安表彰について(平成20年度表彰式)」ですが、これは昭和25年からやっている制度でございまして、保安意識の高揚を図るという意味で、非常に重要な施策ということで続けております。経済産業大臣表彰として、昨年の10月17日に表彰式を開催し、6鉱山、保安従事者21名が表彰されました。
- 山冨会長
ありがとうございました。ただいまの説明について、御質問はございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、ただいまの報告、あるいは全体を通して、何か御質問がございましたらお願いいたします。今日は天候の悪化も予想されるのではないかということで、少しゆとりのあるスケジュールになっておりましたけれども、この際、何か御意見等がございましたら、よろしくお願いいたします。ございませんでしょうか。それでは、意見もないようですので、以上をもちまして本日予定しておりました議事を終了いたします。最後に、事務局の方から何かございましたら、お願いいたします。
- 嘉村鉱山保安課長
本日の協議会で御了承いただきました鉱山保安法の施行規則、告示、内規の改正につきましては、所要の手続を進めさせていただきたいと思います。説明の中で申し上げましたように、次回の中央鉱山保安協議会は、石油鉱山保安部会の結論を受けた規則改正の話を御審議いただくことになると思いますので、今年の夏頃を目処に開催させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。以上でございます。
- 山冨会長
年度末のお忙しい中、御出席をいただきまして、委員の皆様、ありがとうございます。これをもちまして、本日の「中央鉱山保安協議会」を閉会といたします。皆様、どうもありがとうございました。
以上
最終更新日:2009年3月19日